循環器トライアルデータベース

Octopus

目的 低リスク例において,オンポンプ冠動脈バイパス手術とオフポンプ手術との1年後の心臓転帰および費用対効果を比較。一次エンドポイントは全死亡+脳卒中+心筋梗塞(MI)+血行再建術再施行(手術または血管形成)の非発生。
コメント 冠動脈バイパス術のうち,小切開法は通常人工心肺装置を使用しない低侵襲法であるが,グラフト塞栓の発生率が高いことや致命的なグラフト剥離の症例がみられることより,現在ほとんど行われていない。一方,拍動する心臓の手術部位の動きを弱める固定装置が開発され,オフポンプ手術(胸骨正中切開)法が新たな低侵襲法として注目されている。人工心肺装置を使用すると,臓器機能,血液凝固に悪影響を及ぼすが,オフポンプ法により周術期の脳卒中などの罹患率や死亡率がより低くなる可能性が示唆されている。本研究は,低リスク患者においてオフポンプ法はオンポンプ法に比し経費削減に有用であり,両法の術後1年の予後は同等であることを示している。しかし,両法の安全性や心臓転帰の優劣は今回のサンプルサイズでは証明できない。高リスク患者における転帰に対して,両法の比較データもいまだ報告されていない。オフポンプ法は急激に普及しているが,オンポンプ法との長期的な対比(心血管イベント,費用対効果)がこれからの話題である。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(オランダ),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は1年。登録期間は1998年3月~2000年8月。
対象患者 281例。1枝あるいは2枝病変。安定または不安定狭心症(Braunwald分類IB~IIB)で,左室機能が正常または中等度の障害。バイパス術を初めて受ける者で,オフポンプ手術が技術的に可能とみなされた者。
除外基準:緊急または同時に大手術を行う必要のある者,6週間以内のQ波MI,左室機能不全。
治療法 オンポンプ群(139例):心筋保護のためのcold crystalloid cardioplegiaと組合せて人工心肺を使用,またはオフポンプ群(142例):Octopus stabilizerを使用。
心臓転帰,費用対効果を手術後1年で比較。費用対効果比(QOLで補正した延長余命1年当たりのコスト差)の検討にはブートストラップ法を用いた。
サブグループ110例については術後1年に冠動脈造影の実施を予定(実際には70例に造影検査施行)。
結果 1年後の一次エンドポイントは,オンポンプ群126例(90.6%)vs オフポンプ群125例(88.0%)であった(絶対差2.6%,95%信頼区間[CI ]-4.6~9.8,p=0.48)。グラフト開存率は,オンポンプ群93% vs オフポンプ群91%(絶対差2.0%,95%CI -6.5~10.4)。
1年後の1人当たりの直接医療費は,オンポンプ群で14.1%(1839ドル)高かった(14908ドル vs 13069ドル)。QOL補正後の延長余命は,オンポンプ群0.83年 vs オフポンプ群0.82年(絶対差0.01年,95%CI -0.03~0.04)でオンポンプ群の方が長かった。ブートストラップ推定95%信頼区間において,オフポンプ手術はオンポンプ手術に比べて費用対効果が高かった。
★結論★低リスク患者において,オンポンプ冠動脈バイパス術とオフポンプ冠動脈バイパス術とで1年後の心臓転帰において差はないが,オフポンプ術のほうが費用対効果が高い。
文献
  • [main]
  • Nathoe HM et al for the study group: A comparison of on-pump and off-pump coronary bypass surgery in low-risk patients. N Engl J Med. 2003; 348: 394-402. PubMed
  • [substudy]
  • 5年後の結果:生存は両群それぞれ130例。心血管イベントはオフポンプ群30例,オンポンプ群25例で両群間差はなかった(p=0.55)。認知機能に関しても両群同等であった:JAMA. 2007; 297: 701-8. PubMed
  • オフポンプ周術期心筋梗塞に対する側副血行のプロテクトは1年後のイベントを伴わない生存率と関連したが,オンポンプ術ではしなかった:Circulation. 2004; 110: 1738-42. PubMed

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EBM 「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
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収載年月2003.03
更新年月2007.04