循環器トライアルデータベース

PROSPER
Prospective Study of Pravastatin in the Elderly at Risk

目的 心血管疾患または脳卒中の既往あるいは高リスクの高齢者において,HMG-CoA reductase阻害薬pravastatinの血管疾患の予防効果を検討する。

一次エンドポイントは冠動脈心疾患死+非致死性心筋梗塞(MI)+全脳卒中。
二次エンドポイントは心,脳血管疾患を別々に比較,さらに男女で比較する。三次エンドポイントは一過性脳虚血発作,認知機能あるいは行動障害。
コメント Lancet. 2002; 360: 1623-30. へのコメント
高齢者高脂血症の治療効果については十分な検討が行われていなかった。わが国で行われたPATEという予防試験でも対象者が665名と少ないため,個々の疾患における解析が十分ではなかった。本試験は対象者約5800例と初めての高齢者大規模予防試験といえる。冠動脈疾患の予防効果は認められたものの,脳卒中には有意な予防効果を認めなかった。観察期間が短く,脳卒中の発症頻度が予想以下であったためと考察しているが,この点については今後の検討課題となろう。本試験は,80歳までは軽度の高脂血症であっても治療効果が期待できることを示した初めての大規模試験として評価できる。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(スコットランド,アイルランド,オランダ),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間は3.2年(2.8~4.0年)。
登録期間は1997年12月15日~'99年5月7日。
対象患者 5,804例。70~82歳。血管疾患(冠動脈,脳,末梢)既往,あるいは高リスク(喫煙,高血圧,糖尿病)。総コレステロール154.4~347.4mg/dL,トリグリセライド(TG)<531mg/dL。
除外基準:認知機能不良例(mini mental state examination score<24)。
■患者背景:男性2,804例,女性3,000例。スコットランドの症例2,520例,アイルランド2,184例,オランダ1,100例。平均年齢:pravastatin群75.4歳,プラセボ群75.3歳。
治療法 pravastatin群(2,891例):40mg/日投与,プラセボ群(2,913例)にランダム化。
結果 pravastatin群はLDL-Cが147mg/dLから96.5mg/dLと34%低下,HDL-Cは5%増加,TGは13%低下し,一次エンドポイントが408例(14.1%)でプラセボ群の473例(16.2%)に比べリスクが15%低下した(ハザード比0.85;95%信頼区間0.74~0.97, p=0.014)。
冠動脈心疾患死および非致死性MIのリスクも19%低下した(0.81;0.69~0.94, p=0.006)。脳卒中のリスクに変化はなかった(1.03, 0.81-1.31, p=0.8)が,一過性脳虚血発作のハザード比(HR)は0.75(0.55~1.00, p=0.051)であった。冠動脈疾患死はpravastatin群で24%低下した(p=0.043)。認知機能あるいは行動障害に有意な効果はなかった。
重篤な有害事象の発生は両群間に差はみられなかった。新規癌の発症はプラセボ群に比べpravastatin群で多かった(HR 1.25;1.04~1.51, p=0.020)。しかし,本試験での所見および主要なpravstatin試験およびスタチン試験(ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験・追跡期間3年以上)のメタ解析によると,全体でのリスク上昇は認められなかった。なお部位による差はなかったが,消化器癌が65例 vs 45例とpravastatin群で多い傾向があった(1.46, p=0.053)。
★考察★高齢者においてpravastatinの3年間投与により冠動脈疾患のリスクが低下した。本試験は中壮年における現行治療を高齢者にも実施できることを示した。
文献
  • [main]
  • Shepherd J et al on behalf of the PROSPER study group: Pravastatin in elderly individuals at risk of vascular disease (PROSPER); a randomised controlled trial. Lancet. 2002; 360: 1623-30. PubMed
  • [substudy]
  • hs-cTnT濃度とCVDに対数線形の正の相関関係がみられた。
    CVD既往のない4,402例(平均年齢75歳,男性45%)において,高感度トロポニンT(hs-cTnT)と初発CVDリスクの関係を検討した。
    hs-cTnTはランダム化の6か月後に入手した血漿を使用し,電気化学発光法(ECL法)で検出。検知可能例は3,853例(87.5%)。hs-cTnTの中央値7ng/L(hs-cTnT濃度の分布を3つにわけたうち,下位1/3群[<5ng/L]1,375例,中位1/3群[5-8ng/L]1,345例,上位1/3群[>8ng/L]1,682例),正常範囲(≦14ng/L)内は85%。hs-cTnTは年齢,男性,BMI,血圧,NT-proBNP,糖尿病・高血圧既往などと関連した。
    コホート全体(平均追跡期間8.2年)の致死的CVDは694例,スコットランドコホートでCVD 519例,冠動脈疾患405例,脳卒中269例。hs-cTnT濃度とCVDに対数線形の正の相関がみられた(hs-cTnTの下位1/3群とくらべた上位1/3群のハザード比:CVD 1.55;95%信頼区間(CI)1.23-1.96,致死的CVD 2.16;1.74-2.67,CAD 1.85;1.42-2.42,脳卒中1.21;0.88-1.67)。
    hs-cTnTを従来の危険因子(年齢,性,施設,喫煙,糖尿病歴,収縮期血圧,総コレステロール,HDL-C)に基づく予測モデルに追加すると,致死的CVD 10年リスクの予測能が改善(C index:0.600→0.628;改善0.028[95%信頼区間0.007-0.050], P=0.018, categorical NRI* :0.123[0.074-0.153]**, continuous NRI:0.357;0.277-0.436**)。一方,CVDはcontinuous NRIがわずかに改善した(0.152;0.052-0.253, P=0.003)のみだった。
    * net reclassification index;10年リスク予測(<15%, 15-<25%, ≧25%),** P<0.001:J Am Coll Cardiol. 2017; 70: 558-68. PubMed
  • 高齢者における受診毎のLDL-C個人内変動と認知機能-変動の大きさは,平均LDL-C値,スタチン治療とは独立して認知機能低下,脳血流低下,白質病変の多さと関連。
    LDL-Cの受診毎(3,6,12,24か月後)の個人内変動と30か月後の認知機能4領域(選択的注意,処理速度,即時・遅延記憶)の関連(4,428例・平均年齢75歳),神経画像転帰との関連(MRIサブスタディー[535例;平均33か月後])を評価。
    LDL-Cの変動が大きい症例はpravastatin群,プラセボ群ともに収縮期血圧の変動も大きく,平均LDL-Cが高かった。治療群を問わず,LDL-Cの変動が大きい症例は全4領域の認知機能が有意に低かった。MRI評価では海馬容積との関連はみられなかったものの,両群ともにLDL-Cの変動が大きい症例は脳血流が低下しており,さらにpravastatin群では高信号域(白質病変)が大きいことも示された:Circulation. 2016; 134: 212-21. PubMed
  • 高齢者における受診毎血圧変動と認知機能-平均血圧の変動の大きさは独立して認知機能障害と関連する。
    [MRIサブスタディー]オランダの登録者553例(平均年齢74.9歳,血圧156.1/85.1mmHg)において,脳容積, 脳微小出血(cerebral microbleeds),梗塞,白質の高信号域を評価し,3か月ごとのvisit-to-visit variability in blood pressure(受診ごとの血圧の変動)と認知機能4領域(選択的注意,処理速度,即時・遅延記憶)との関連を評価した結果(平均追跡期間は3.2年):診察室血圧測定回数は12.9回。追跡期間中の平均血圧は153.1/83.5mmHgで,平均標準偏差は14.8/7.1mmHg。平均収縮期血圧(SBP)とSBPの標準偏差に弱いながらも有意な相関が(r=0.20, p<0.001),また拡張期血圧(DBP)についても同様の相関がみられた(r=0.12, p<0.001)。
    平均血圧,CVD危険因子で調整すると,SBPの変動性が大きい患者では認知機能4領域すべての結果が不良であった。さらにSBPとDBPの変動性の大きさは,海馬容積の減少,皮質梗塞のリスク増加と,DBPの変動性の大きさは脳微小出血と関連した(全p<0.05):BMJ. 2013; 347: f4600. PubMed
  • 高齢者において,メタボリックシンドローム(MetS)とその構成因子は2型糖尿病発症とは関連するが,心血管疾患リスクの予測因子ではない。
    3.2年間で心血管イベントは772例,糖尿病の発症は287例。MetSと心血管疾患リスクの上昇とに関連はみられなかったが(非MetSと比較したハザード比1.07;95%信頼区間0.86~1.32),糖尿病リスクの上昇とは関連し(4.41;3.33~5.84),MetSの構成因子(BMI/腹囲,トリグリセライド,HDL-C,空腹時血糖値,血圧)でも同様に関連がみられ,特に空腹時血糖が顕著であった(18.4;13.9~24.5)。心血管疾患既往例でも同様であった。
    ・本結果はBritish Regional Heart Study (BRHS*) でも裏付けられた。 * 英国(24の町)で1978年に開始された40~59歳の男性心血管疾患7735人の前向き観察研究。今回検討したのは,開始から20年目の1998~2000年の検診(平均60~79歳・2737例)から2006年までの追跡結果。
    7年間で心血管疾患は440例,糖尿病は105例発症。MetSと心血管疾患とに弱い関連が(相対リスク1.27;1.04~1.56),糖尿病とは強い関連がみられた(7.47;4.90~11.46)。MetSの構成5因子のいずれも心血管疾患リスクを予測しなかった:Lancet. 2008; 371: 1927-35. PubMed
  • 70歳以上の例において,HDL-Cはリスクおよびpravastatin治療の有効性の予測因子の可能性がある。pravastatinの有効例はHDL-C<45mg/dL,LDL-C/HDL-C>3.3だと示唆される:Circulation. 2005; 112: 3058-65. PubMed

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収載年月2002.12
更新年月2017.10