循環器トライアルデータベース

CADILLAC
Controlled Abciximab and Device Investigation to Lower Late Angioplasty Complications

目的 急性心筋梗塞(AMI)患者において,primary PTCAにステント,血小板GPIIb/IIIa受容体拮抗薬を併用した場合の有効性を検討。一次エンドポイントは6か月間の全死亡,再梗塞,虚血による標的血管の血行再建術再施行,介護を要する脳卒中。
コメント 急性心筋梗塞症において,冠動脈形成術後1か月以内に虚血発作や再梗塞が高率に生じ,再狭窄・再閉塞率もいまだ高い。ステントとGPIIb/IIIa受容体拮抗薬の併用が心血管イベントの抑制をもたらすか否かを明らかにするのが今回の研究テーマである。本研究では急性心筋梗塞症において恒常的なステント使用は臨床的に有用であるが,心カテ室でのGPIIb/IIIa受容体拮抗薬併用の有用性は明らかではなかった。以前報告されたSTENT-PAMI試験では,ステント(Palmaz-Schatz)使用は再狭窄率を低下させたが,TIMI 3灌流が得られる比率が低く1年生存率はステント未使用に比し低値であった。今回の結果はステントの有用性を示しており,ステントの種類(MultiLink)の相違,術者の経験,併用薬剤の改善が関連していると考えられる。今後,心カテ室に入る前のGPIIb/IIIa受容体拮抗薬投与の有用性/少量の血栓溶解薬との併用を考慮すべきである。(星田
デザイン 無作為割付け,2×2 factorial,多施設(9か国76施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は12か月。実施期間は1997年11月~'99年9月。
対象患者 2082例。18歳以上。AMIの症状が>30分,<12時間持続。連続する2誘導以上でST上昇あるいは左脚ブロック。血管造影上で高度の狭窄が認められ局所壁運動の異常を引き起こしている症例。
除外基準:心原性ショック(30分以上の収縮期血圧<80mmHg,昇圧薬静注あるいは大動脈内バルーンパンピングの必要例),出血傾向あるいは試験薬へのアレルギー既往など。
治療法 PTCA単独群(518例),PTCA+GPIIb/IIIa受容体拮抗薬abciximab群(528例),ステント単独群(512例),ステント+abciximab群(524例)にランダム化。abciximabは0.25mg/kgをボーラス投与後0.125μg/kg/分(最大10μg/分)を12時間静注。
施行前投与:aspirin 324mgを経口投与(欧州の施設は250mgを静注),ticlopidine 500mgあるいはclopidogrel 300mgを経口投与,heparin 5000Uボーラス投与[活性化凝固時間が>350秒(abciximab投与例は200~300秒)を達成するように投与],β遮断薬を静注。
施行後投与:aspirin 325mg/日,禁忌でない場合はβ遮断薬,ACE阻害薬を投与。ステント施行例はticlopidine 250mg×2回/日あるいはclopidogrel 75mg/日を4週間経口投与。
PTCA後のステントへのクロスオーバー,abciximab非投与群の投与群へのクロスオーバーは可とした。
結果 標的血管の正常灌流回復率は94.5~96.9%で,治療方法による差はなかった。
一次エンドポイントの発生率はPTCA群20.0%,PTCA+abciximab群16.5%,ステント群11.5%,ステント+abciximab群10.2%(対PTCA群:p<0.001)であった。死亡,脳卒中,再梗塞の発生率に群間差はみられず,標的血管の血行再建術の再施行率はPTCA群(15.7%)が最も高く,ステント+abciximab群(5.2%)が最も低く,群間で有意差が認められた(p<0.001)。
再狭窄率はPTCA群40.8%,ステント群22.2%(p<0.001),梗塞関連血管の再閉塞率は各11.3%,5.7%(p=0.01)で,いずれもabciximab使用とは関係しない効果であった。
★結論★経験のある施設ではステントはabciximab治療の有無を問わず,ルーチンの再灌流療法として考慮されるべきである。
文献
  • [main]
  • Stone GW et al for the controlled abciximab and device investigation to lower late angioplasty complications (CADILLAC) investigators: Comparison of angioplasty with stenting, with or without abciximab, in acute myocardial infarction. N Engl J Med. 2002; 346: 957-66. PubMed
  • [substudy]
  • door-to-balloon time(病院到着からバルーン拡張までの時間)≦90分で1年後の死亡率が有意に低下。ただし,発症後90分以内の患者の場合。
    HORIZONS-AMIと合わせて解析:primary PCIを施行し,door-to-balloon time (DBT)が記録された4,548例において,DBT(≦90分,>90分)が1年後の死亡率に及ぼす影響をサブグループ(発症から病院到着までの時間,TIMIリスクスコア)により解析。
    DBT≦90分(1,611例)では>90分(2,937例)に比べて1年後の死亡率が有意に低下(3.1% vs 4.3%:ハザード比0.72;95%信頼区間0.52~0.99, p=0.045)。
    発症から病院到着までの時間≦90分の患者では,DBT≦90分で死亡率が有意に低下したが(1.9% vs 3.8%:0.49;0.26~0.93, p=0.029),病院到着までの時間>90分の患者ではDBTによる影響は認められなかった(4.0% vs 4.6%, p=0.47)。
    TIMIリスクスコアによる解析では,リスク分類にかかわらずDBT≦90分で死亡率の低下傾向がみられた(高リスク患者[TIMIリスクスコア≧2]:5.7% vs 7.4%, p=0.12;低リスク患者[<2]:1.1% vs 1.6%, p=0.25)。この傾向は,病院到着までの時間≦90分の患者においても同様であった(高リスク患者3.7% vs 7.0%, p=0.08;低リスク患者0.8% vs 1.5%, p=0.32)。ただし,絶対リスク減少は高リスク患者のほうが大きかった(3.3% vs 0.7%):J Am Coll Cardiol. 2010; 56: 407-13. PubMed
  • PCI施行後のクレアチンキナーゼピーク値は1年後の死亡率の独立した強力な予測因子である:J Am Coll Cardiol. 2006; 47: 951-61. PubMed
  • AMIにおけるPCI後の1年死亡を予測する7因子(STENT-PAMIと合わせて検討):EF<40%,Killip分類class II/III,腎機能障害,>65歳,貧血,3枝疾患,手技後のTIMI flow(0~2):J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 1397-405. PubMed
  • 女性は主要な有害心イベントおよび出血性合併症の独立した予測因子である。女性のリスクの高さは身体サイズ(体表面積1.74m2 vs 男性2.02m2)および危険因子(年齢,高血圧,糖尿病,高脂血症,腎障害発症率などが男性より有意に高い)による可能性がある:Circulation. 2005; 111: 1611-8. PubMed
  • 糖尿病の有無にかかわらずTIMI grade 3回復率は同様に高率であったが,糖尿病例の方がより異常心筋灌流例が多いようである。糖尿病例の低細小血管灌流が有害転帰に関連している可能性がある:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 508-14. PubMed
  • 死亡率,重大な出血率,脳卒中率の高い65歳以上の高齢者において,ステント植込みによる再狭窄の抑制により転帰は改善する:Circulation. 2004; 110: 1598-604. PubMed
  • AMI発症時の僧帽弁逆流はその程度を問わず再灌流例において死亡の強力な独立した予測因子である:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 2128-34. PubMed
  • PCI後のST上昇の回復は死亡率と再狭窄と強く関連し,標的血管の開存性とは独立していた:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 1215-23. PubMed
  • TIMI grade 3回復率は96.1%にもかかわらず心筋正常灌流回復率は17.4%に過ぎず,この心筋正常灌流回復例の死亡率が最も低かった。ステント,GP IIb/IIIa投与のいずれもPTCAのみと比較して心筋灌流を有意に改善できなかった:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 305-12. PubMed
  • 貧血は有害な転帰および死亡と強く関連する:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 547-53. PubMed
  • ステント施行中のabciximab投与により,主に虚血による標的血管の血行再建術再施行が低下し30日後のイベント非発症生存率を有意に上昇した:Circulation. 2003; 108: 1316-23. PubMed
  • primary stentは費用対効果が高い。abciximabの費用対効果は確かではなく主に,長期生存率が高いかどうかによる:Circulation. 2003; 108: 2857-63. PubMed
  • たとえprimary PTCA後に最適の結果が得られても早期および晩期の転帰はルーチンのステント植込みの方が改善できる:J Am Coll Cardiol. 2003; 42: 971-7. PubMed

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収載年月2002.05
更新年月2010.09