循環器トライアルデータベース

FIRST
FGF Initiating RevaScularization Trial

目的 高度の冠動脈疾患(CAD)患者において,組換え型線維芽細胞増殖因子-2(rFGF2)の冠動脈内単回ボーラス投与の有効性と安全性を検討。有効性の一次エンドポイントは,90日後の運動耐容時間。
コメント CABGやPCIが適応でない重症の冠動脈疾患例に対して,血管生物学の進歩により側副血行路の成長を促進する治療法が開発されている。線維芽細胞増殖因子(FGF)の血管新生効果は心筋の虚血実験で既によく知られており,臨床第1相試験においても安全性と有効性が示されている。今回のプラセボ対照二重盲検試験では,FGF単回冠動脈内投与により重症例では90日後の臨床症状の改善が得られている。一次エンドポイントは90日後の運動耐容時間であるが,治療前の運動耐容時間が平均540秒と比較的長いため治療の有用性が認められず,試験デザインの設定の難しさを示している。FGFの単回冠動脈内投与後1時間では投与量の1%未満しか心筋内に残存していないので,心嚢内投与や心筋組織内注入も一考であろう。(星田
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
期間 追跡期間は180日。
対象患者 337例。平均年齢63歳(33~86歳)。男性84%。標準外科手術あるいはカテーテルによる血行再建術が至適以下のCAD例。運動負荷試験(ETT)による運動耐容時間が2つの連続したテスト(>24時間で<2週間間隔を空ける)で改訂Bruce法プロトコールにより,≧3分かつ<13分で,2つの運動時間の差が平均の20%以内。核スキャン上,左室の15%以上を占める誘発性虚血,EF≧30%。除外基準:不安定狭心症,心筋梗塞,3か月以内のCABGあるいはPTCA,10年以内の悪性腫瘍。腎不全,網膜症,試験担当医によりrFGF2投与が不適格と診断された例。
治療法 rFGF2 0.3μg/kg群(82例) ,3μg/kg群(84例),30μg/kg群(85例),プラセボ群(86例)にランダム化。投薬は注入ポンプにより20分間冠内注入。試験薬投与10~20分前にheparin(40U/kg)を単回ボーラス静注。投与後,6時間の観察を経て,一定のインターバルをおいて180日間追跡。
有効性は投与後90日目と180日目のETT,心筋核灌流イメージ,シアトル狭心症質問票(SAQ),Short-Form 36質問票(SF-36),Canadian Cardiovascular Society(CCS)狭心症分類によって評価した。
結果 90日後の運動耐容時間は全群で延長したが,rFGF2群とプラセボ群の間に有意差は認められなかった。
SAQによる狭心症の頻度は,90日後にrFGF2群で低下した(p=0.035,0.3,3,30μg/kg群 vs プラセボ群は各p=0.08,0.004,0.05),しかし180日後にはプラセボ群とrFGF群の差はなくなった。CCS狭心症分類も3μg/kg投与群で90日後には有意に低下したが(p=0.012),180日後には両群間差はなくなった。SF-36のphysical component summary scaleも90日後はrFGF群で有意に増加 したが(p=0.033),180日目にはプラセボ群と同等になった。プラセボ群での改善が持続したため,180日後に有意差が認められた例はなかった。
これらの改善度における群間差は試験開始時の重症例(SAQ狭心症頻度スコア≦40,CCS III~IV度)で,より明白であった(post hoc解析)。
心筋核灌流イメージで有意な変化は90日後,180日後ともなかった。
有害事象の発生は30μg/kg rFGF群で低血圧の発症率が高かったのを除いて全群同様であった。
★結論★rFGF-2の冠内ボーラス単回投与は,運動耐容能および心筋灌流を改善しなかったが,90日後に症状改善の傾向を示した(180日後にはみられなかった)。
文献
  • [main]
  • Simons M et al: Pharmacological treatment of coronary artery disease with recombinant fibroblast growth factor-2; double-blind, randomized, controlled clinical trial. Circulation. 2002; 105: 788-93. PubMed

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収載年月2002.06