循環器トライアルデータベース

HERO-2
Hirulog and Early Reperfusion or Occlusion-2

目的 急性心筋梗塞(AMI)のためstreptokinaseによる血栓溶解療法を受ける患者において,抗トロンビン薬bivalirudin(hirulog)の有効性をheparinと比較。一次エンドポイントは30日以内の死亡率。
コメント bivalirudinは再梗塞の予防に有効であるが,軽度~中等度の出血の合併が多いことに注意。(井上
デザイン 無作為割付け,オープンラベル,多施設(46か国,539施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は30日。
対象患者 ST上昇型心筋梗塞(MI )17,073例。61.8歳(中央値)。30分以上継続する胸部不快感を呈してから6時間以内で,隣合う2つ以上の誘導で1mm以上のST上昇(あるいはV1-V3では隣合う2つの誘導で2mm以上のST上昇)か,新規の左脚ブロックを合併する例。
除外基準:出血例あるいは出血素因を有するもの,脳卒中の既往,6か月以内の一過性脳虚血発作,最近のwarfarin治療,6週間以内の大手術あるいは外傷,血圧>180/110mmHg,12時間以内の低分子量heparin治療,heparin治療歴のある患者で活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)>50秒,streptokinase治療歴など。
◆女性は28.4%であったが,予期せずbivalirudin群に多く割付けられた(p=0.003,サブグループ補正後p=0.07)。
治療法 全例にaspirin 150~325mgを投与し,bivalirudin群(8516例)あるいはheparin群(8557例)にランダム化。streptokinaseは抗血栓薬ボーラス静注直後から150万単位を30~60分で注入。
bivalirudin群:0.25mg/kgをボーラス静注後,0.5mg/kg/時を12時間静注,次いで0.25mg/kg/時を36時間静注。APTTを12時間後と24時間後に測定。投与量は重大な出血が無い限り,12時間後のAPTT測定後まで減量はしない。APTT>150秒の場合は18時間後も測定し,それでも>150秒の場合は投与量を減量。24時間後に重大な出血が発生あるいはAPTT>120秒以上の場合,投与量を1/3減量。
heparin群:5000単位をボーラス投与後,1000単位/時(体重≧80kg)あるいは800単位/時(体重<80kg)を48時間以上静注。12時間後にAPTT 50~75秒を維持するように調節。
結果 一次エンドポイントは,bivalirudin群10.8%(919例),heparin群10.9%(931例),オッズ比0.99[95%信頼区間(CI)0.90-1.09],p=0.85)。ベースライン時のリスク因子で補正後の死亡率はbivalirudin群10.5%,heparin群10.9%[オッズ比0.96(95%CI 0.86-1.07),p=0.46]。
96時間以内の再梗塞率は,heparin群(2.3%)に比べbivalirudin群(1.6%)で有意に低く[0.70(0.56-0.87),p=0.001],入院中の再梗塞もbivalirudin群で低かった[2.8% vs 3.6%,0.78(0.66-0.93),p=0.005]。
bivalirudinとheparinの出血の合併症は,重篤なもの58例(0.7%) vs 40例(0.5%)(p=0.07),脳内出血47例(0.6%) vs 32例(0.4%)(p=0.09)。中等度のもの118例(1.4%) vs 90例(1.1%)(p=0.05),軽度なもの1087例(12.8%) vs 773例(9.0%)(p<0.0001)であった。輸血はbivalirudin群118例(1.4%),heparin群95例(1.1%)(p=0.11)。
★考察★トロンビンに特異的な抗凝固薬のbivalirudinはheparinに比べて,streptokinaseによる血栓溶解療法後の再梗塞を抑制した。
文献
  • [main]
  • White H for the hirulog and early reperfusion or occlusion (HERO)-2 trial investigators: Thrombin-specific anticoagulation with bivalirudin versus heparin in patients receiving fibrinolytic therapy for acute myocardial infarction; the HERO-2 randomised trial. Lancet. 2001; 358: 1855-63. PubMed
  • [substudy]
  • 前壁急性心筋梗塞および右脚ブロック(RBBB)において,QRS間隔の延長は30日後の死亡率上昇と関連する。血栓溶解後の早期のST回復は,RBBBの持続にかかわらず死亡率は低い:Circulation. 2006; 114: 783-9. PubMed
  • ST上昇AMI発症時に伴う初期のQ波は独立して30日後の高死亡率を予測する:Lancet. 2006; 367: 2061-7. PubMed
  • 左脚ブロック(LBBB)時のST変化はAMI特有で,30日後の死亡を予測する。ST変化を伴わないLBBB例は正常例よりも30日死亡率が低い:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 29-38. PubMed
  • AMIにおけるインフォームド・コンセント(HERO-2 consent substudy):コンセントを得るまでの過程は臨床試験のregulatory requirementsに適うものであったが,ほとんどの患者に不適当であった。Flesch reading ease index,Flesch-Kinkade grade levelで患者のinformation sheetの判読性を評価したが,説明された情報の理解度および自主的な同意は最適以下であった:Lancet. 2003; 361: 918-22. PubMed

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収載年月2002.02
更新年月2006.12