循環器トライアルデータベース

Gamma 1

目的 ステント内再狭窄治療として冠動脈内γ線治療(iridium-192)の有効性を検討。一次エンドポイントは死亡+心筋梗塞(MI)+血行再建術の再施行の必要。
コメント 冠動脈内放射線治療に使用される線源にはγ線とβ線があり,再々狭窄の生じやすいステント内再狭窄に対してγ線を用いたSCRIPPS studyを皮切りに臨床試験が数多くなされている。Gamma 1 studyでは,冠動脈内γ線治療はステント内再々狭窄の頻度を有意に低下させている。問題点は遅延性血栓症(治療30日以降)の発生率がγ線治療群に多く,急性心筋梗塞の発症につながっている点である。これまでのステント治療だけではこのような血栓症はみられなかったが,長期的な抗血小板療法の重要性が今回示唆されている。放射線治療がステント部の内皮化を遅延させたり,内皮機能に影響を与えるためかもしれない。β線を用いたINHIBTing study(2000年AHA)では遅延性血栓症はみられておらず,現在進行中の他のstudyの結果に注目したい。(星田
デザイン 無作為,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
期間 追跡期間は9か月。
対象患者 252例。狭心症既往,心筋虚血の症状を有するもの。ステントが植込まれたnative冠動脈(血管径 2.75~4.0mm)で,標的病変の狭窄率が血管径の>60%(血管造影での目測による),病変<45mm。
除外基準:72時間以内のMI,ステント内再狭窄部位の完全閉塞,abciximab使用予定例,EF<40%。
治療法 iridium-192群131例,プラセボ群121例。
各病変を血管内エコー(IVUS)を用いて評価し,その病変長に応じて3種の長さの治療リボンを選択。治療リボンには1mmおきに長さ3mmの“シード”と呼ばれるγ放射体小粒をリボンの長さにより6個(15mm未満の病変用),10個(15~30mmの病変用),14個(30~45mmの病変用)配置。線量は放射線源から再遠位の標的病変で8Gy,最近位の病変で30Gy未満。プラセボ群には放射活性のないシードの付いた治療リボンを使用。
全例にaspirin 325mg/日,およびticlopidine(250mg×2回/日)あるいはclopidogrel 75mg/日を48時間以上経口投与した。治療中に活性化凝固時間を>300秒に保つためheparinを静注。
結果 患者背景:80%以上が不安定狭心症例。
シード数が14個のリボン線源の使用率は,iridium-192群が43%,プラセボ群が40%。iridium-192群の線源から最近位の標的病変平均照射線量は20.25Gy,最遠位の標的病変は7.95Gy,線源から2mmの標的病変では13.5Gyであった。
ステント内再狭窄はiridium-192群が24例(21.6%),プラセボ群52例(50.5%)で(p=0.005),病変再狭窄は36例(32.4%) vs 57例(50.5%)であった(p=0.01)。
一次エンドポイントはiridium-192群で37例(28.2%),プラセボ群で53例(43.8%)であった(p=0.02)。しかしこのiridium-192群における一次エンドポイント発生率の低下は,標的病変の血行再建術の必要性が低下したことのみによるもので,死亡,MIの低下によるものではなかった。
遅延性血栓症の発症率はiridium-192群で5.3%,プラセボ群で0.8%で(p=0.07),その結果,遅延性MI発症率も9.9% vs 4.1%(p=0.09)であった。遅延性血栓症は照射治療群で抗血小板療法(ticlopidine,clopidogrel)を中止した後,および放射線治療時に新規ステント植込み例のみに発症した。
★結論★iridium-192による冠動脈内照射は臨床的にも冠動脈造影上でも再狭窄率が低下したが,遅延性血栓症の高発症に関連し,MIのリスクが上昇する結果となった。遅延性のステント内血栓症の問題が解決されれば,冠動脈内照射はステント内再狭窄の治療として有用であろう。
文献
  • [main]
  • Leon MB et al: Localized intracoronary gamma-radiation therapy to inhibit the recurrence of restenosis after stenting. N Engl J Med. 2001; 344: 250-6. PubMed
  • [substudy]
  • ステント内再狭窄治療としての冠動脈内放射線治療は臨床上アウトカムを改善したが,1年のコストは標準治療に比べ増加した。しかしながら血栓症を抑制できれば全体の医療費を削減できる可能性がある:Circulation. 2002; 106: 691-7. PubMed

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収載年月2001.07
更新年月2002.09