循環器トライアルデータベース

TACTICS-TIMI 18
Treat Angina with Aggrastat and Determine Cost of Therapy with an Invasive or Conservative Strategy-Thrombolysis in Myocardial Infarction 18

目的 不安定狭心症あるいはST上昇を伴わない心筋梗塞(MI)患者において,早期の侵襲的治療と保存的治療(薬物療法,選択的侵襲治療)の効果を比較。一次エンドポイントは6か月以内の死亡+非致死性MI+急性冠症候群による再入院。
コメント 不安定狭心症の治療において,早期の積極的な血行再建術と,非侵襲的な血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬投与のそれぞれの意義を示す試験である。(中村中野永井
デザイン 無作為割付け。
期間 追跡期間は6か月。
対象患者 2220例。平均年齢62歳。24時間以内に狭心症の症状[安静時あるいは最小の労作時において発症が加速パターン,持続時間の延長(>20分),繰り返す])を有していたもの。次の3症状のうち1つ以上有するもの:新規の0.05mV以上のST下降,0.1mV以上の一過性(<20分)ST上昇,2誘導以上で0.3mV以上のT波の変化。心マーカー値の上昇。カテーテル検査,血行再建術,MIの病歴から証明される冠動脈疾患。
除外基準:持続性ST上昇,二次性狭心症例,6か月以内のPTCAあるいはCABG施行例,クレアチニン値>2.5mg/dL,登録前3日以上のticlopidine,clopidogrelあるいはwarfarin治療例など。
治療法 全例に抗血小板薬aspirin 325mg/日を投与,および抗凝固薬heparin 5000Uをボーラス静注後1000U/時を48時間注入,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofiban 0.4μg/kg/分を30分静注後,0.1μg/kg/分を48時間あるいは血行再建術施行まで注入。tirofibanの静注は施行後12時間以上継続。
早期侵襲的治療群(1114例):ランダム化から4~48時間後に冠動脈造影,ルーチンのカテーテル法を実施後に血行再建術。保存的治療群(1106例):薬物療法,状態が安定していれば運動負荷試験を実施し,客観的に虚血の再発あるいは負荷試験により異常を認める場合にカテーテル法を実施。
結果 一次エンドポイントの発生率は侵襲的治療群で有意に低下した[15.9% vs 19.4%,オッズ比0.78;95%信頼区間(CI)0.62-0.97,p=0.025]。死亡あるいは非致死性MIの発生率も同様に低下した(7.3% vs 9.5%,オッズ比0.74,95%信頼区間0.54-1.00,p<0.05)。
★結論★血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofiban治療を受けているST上昇のない不安定狭心症およびMI例では,早期侵襲的治療は主要な心イベントを有意に抑制した。本データは早期侵襲的治療に併用して早期GP IIb/IIIa受容体拮抗薬治療の適用範囲を広げる方針を支持するものである。
◆ 2001年ACCにおいて発表:入院中の医療コストは侵襲的治療群が14,660ドル,保存的治療群12,667ドル。退院後は6,063ドル vs 7,203ドル,6か月間では20,616ドル vs 19,987ドル。コストの予測因子はトロポニン値>0.01(p<0.0001),ST変化(p<0.0001),糖尿病(p=0.08)。
文献
  • [main]
  • Cannon CP et al for the TACTICS-thrombolysis in myocardial infarction 18 investigators: Comparison of early invasive and conservative strategies in patients with unstable coronary syndromes treated with the glycoprotein IIb/IIIa inhibitor tirofiban. N Engl J Med. 2001; 344: 1879-87. PubMed
  • [substudy]
  • 16のTIMI trialsでの検討:ACS患者において貧血は有害心血管イベントの強い独立した予測因子である:Circulation. 2005; 111: 2042-9. PubMed
  • 白人に比べ非白人は予後が有意に不良である。プロトコールガイダンスがない場合の,非白人の心臓治療薬服用率は白人よりも有意に低く,プロトコールで求められていない血管造影の実施率,PCI例でのステント植込み率,PCI後の手技成功率(急性期獲得径)も有意に低い。早期侵襲的治療は白人,非白人で同様に,特にトロポニン上昇例あるいはST偏位例で有効であった:Circulation. 2005; 11: 1217-24. PubMed
  • トロポニン上昇は冠動脈造影上有意な冠動脈疾患ではない例においてでさえ,死亡あるいは再梗塞のリスク上昇と関連する:J Am Coll Cardiol. 2005; 45: 19-24. PubMed
  • TIMI 11A, B, 12, OPUS-TIMI 16と合わせて検討:非ST上昇型急性冠症候群において,糸球体ろ過率低下はTIMI risk scoreとは独立して,血栓および重大出血イベントが高いのと同様に,高死亡率とも相関する:Eur Heart J. 2004; 25: 1998-2005. PubMed
  • Bタイプナトリウム利尿ペプチド(BNP)の上昇はtighter culprit stenosis,corrected TIMI frame count(CTFC)の増加,左主幹冠動脈前下行枝と関連:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 564-8. PubMed
  • 男性ではクレアチンキナーゼ-MB,トロポニン値が高く,女性はCRP(C-reactive protein),脳性ナトリウムペプチド値が高い:Circulation. 2004; 109: 580-6. PubMed
  • TIMI IIIbと合わせて検討:GP IIb/IIIa受容体拮抗薬,ステントを含む治療は,死亡,MI,急性冠症候群による再入院率を低下させ,保存的治療よりも早期治療の有効性の方が大きい傾向。ベースライン時のリスク調整後,早期侵襲治療の有効性はTIMI IIIbよりもTACTICS-TIMI 18の方が良好な傾向にあった(オッズ比0.79):Circulation. 2004; 109: 874-80. PubMed
  • 非ST上昇急性冠症候群において,BNP(Bタイプナトリウム利尿ペプチド)の上昇(>80pg/mL)は,死亡およびうっ血性心不全の高リスク例を同定し,トロポニン Iの予後情報も付加する:J Am Coll Cardiol. 2003; 41: 1264-72. PubMed
  • 女性は男性に比べ高齢で高血圧の罹患率が高く,MIおよびバイパス術既往率,心マーカーの上昇率は低かった。早期侵襲的治療の有効性において男女差はなく,トロポニンT上昇女性例でさらに有効性が高かった:JAMA. 2002; 288: 3124-9. PubMed
  • 有効性をもたらす早期侵襲的治療に伴うコストの増加は大きくない:JAMA. 2002; 288: 1851-8. PubMed
  • 侵襲的治療は,心筋壊死の発生は少ないがcreatine kinase muscle-brain(CK-MB)およびトロポニン値がリスク上昇を示唆する例で最も有効である。トロポニン値の決定は,特にCK-MB値陰性例において侵襲的治療のトリアージ(優先順位を決めること)に際し重要な情報を供する:J Am Coll Cardiol. 2002; 40: 1044-50. PubMed
  • 血栓および心外膜血管の血流異常とは独立して,組織レベルの灌流障害はトロポニンT値上昇のリスクが1.8倍に上昇することと関連している:Circulation. 2002; 106: 202-7. PubMed
  • TIMI 11Bと合わせて検討:ミオグロビンがMIの確認閾値である>110μg/Lを超えることと,6か月後の死亡率上昇は患者背景,心電図変化,CK-MBおよびcTnIの上昇とは独立して関係がある:J Am Coll Cardiol. 2002; 40: 238-44. PubMed
  • TnI,C-reactive protein(CRP),B-type natriuretic peptide(BNP)は6か月後の死亡+MI+CHFの独立した予測因子である(各オッズ比2.1,1.5,1.6):Circulation. 2002; 105: 1760-3. PubMed
  • 試験開始時のcTnIおよびcTnT(cardiac troponins IおよびT)上昇は,たとえ上昇値が小さくても侵襲的治療効果が最大の高リスク群と同定できる:JAMA. 2001; 286: 2405-12. PubMed

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収載年月2001.04
更新年月2005.07