循環器トライアルデータベース

OPTIMAAL
Optimal Trial in Myocardial Infarction with the Angiotensin II Antagonist Losartan

目的 急性心筋梗塞(AMI)後の心不全高リスク例におけるアンジオテンシンII受容体拮抗薬losartanの死亡抑制効果をACE阻害薬captoprilと比較。
一次エンドポイントは全死亡。
コメント ACE阻害薬の心不全,心筋梗塞(MI)後の第一選択薬としての位置づけはすでにSAVE,AIRE,TRACE,SMILEなどの多くのエビデンスによって確立している。本試験はアンジオテンシンII受容体拮抗薬(サルタン薬)がMI後のリモデリングとその後の死亡の予防効果においてACE阻害薬を上回ることができるか否かを検討した大規模臨床試験であるが,答は「NO」であった。
NYHA心機能分類II~IV度の心不全に対してlosartanとcaptoprilの死亡率を比較したELITE IIでもサルタン薬の優位性を証明できなかったが,本試験では心血管死亡率ではむしろlosartan群で多いという結果であることは注目すべきである。OPTIMAAL,ELITE IIの2つの試験は,ACE阻害薬がMI後の症例の第一選択薬であるという位置づけは不変であることを確認した。ACE阻害薬で咳の副作用が出た時にサルタン薬に変更するというのがEBMに基づく治療法といえよう。サルタン薬は降圧薬として,あるいは心不全治療薬としてもまずプラセボよりも優れていることを証明した試験結果が必要である。(桑島
デザイン 無作為割付け,二重盲検,多施設(欧州7か国329施設),intention-to-treat解析。
期間 平均追跡期間2.7年。
死亡数が予定していた937例以上に達し2002年2月10日試験終了。
対象患者 5477例。50歳以上(平均年齢67.4歳)。梗塞急性期の心不全,EF<35%,左室拡張終期径>65mm,新規発症の前壁Q波梗塞,再梗塞,症状の発症から10日以内。
除外基準:仰臥収縮期血圧<100mmHg,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬服用例,不安定狭心症,血行動態的に有意な心臓弁膜狭窄症あるいは不整脈,血行再建術予定例。
治療法 losartan群(2744例):12.5mg→ 50mg/日,captopril群(2733例):6.25mg×3回/日から投与を開始,忍容性があれば12.5mg→ 50mg×3回/日,にランダム化。
結果 一次エンドポイントは946例で,losartan群499例(18%),captopril群447例(16%)であった[相対リスク(RR)1.13:95%信頼区間(CI)0.99~1.28,p=0.07]。
二次エンドポイントである突然死あるいは心停止からの蘇生は,239例(9%) vs 203例(7%)[RR 1.19:95%CI 0.98~1.43,p=0.07],三次エンドポイントの全再梗塞は,384例(14%) vs 379例(14%)[RR 1.03:95%CI 0.89-1.18,p=0.72]。全入院は1806例(66%) vs 1774例(65%)[RR 1.03:95%CI 0.97-1.10,p=0.37]。
忍容性はlosartan群の方がcaptopril群より有意に良好で,試験中止例も同群の方が少なかった[458例(17%) vs 624例(23%),RR 0.70:95%CI 0.62-0.79,p<0.0001]。
★考察★死亡抑制においてlosartanがcaptoprilに比べて有意に優れているとの結果は認められなかったため,急性心筋梗塞後の患者ではやはりACE阻害薬が第一選択薬であるべきである。しかし,losartanはcaptoprilより忍容性が良好であることは有意に脱落が少ないことにつながる。ACE阻害薬不忍容例におけるlosartanの有用性は明確でないため検討する余地がある。
文献
  • [main]
  • Dickstein K, Kjekshus J and the OPTIMAAL steering committee: Effects of losartan and captopril on mortality and morbidity in high-risk patients after acute myocardial infarction; the OPTIMAAL randomised trial. Lancet. 2002; 360: 752-60. PubMed
  • [substudy]
  • 入院時の貧血,追跡時の低ヘモグロビンは死亡とCHFによる入院の危険因子。
    ベースライン時ヘモグロビン(Hb):女性12.6g/dL,男性13.7g/dL,<11.5g/dLは9.3%(女性18.2%,男性5.8%)。
    低Hbと関連したのは,女性,糖尿病,高年齢,高Killip分類,低BMI,低収縮期血圧,低総コレステロール,非喫煙(全p<0.05)。
    高Hb(1標準偏差ごと)は死亡(ハザード比0.88;95%信頼区間0.83~0.93),CHFによる入院(0.85;0.77~0.93),全入院(0.96;0.92~0.99)のリスク低下と関連した(全p<0.05)。
    ベースライン時の貧血例(Hbが女性:<12g/dL,男性:<13g/dL)は全死亡(1.35;1.16~1.56,p<0.005),CHFによる入院(1.33;1.17~1.51,p=0.006)リスクが上昇した。
    非貧血例で1年後に貧血になったものは女性10.1%,男性10.0%。ベースライン時の貧血例で1年後に非貧血でなくなったものは65%,全追跡時(中央値3.0年)46%。12か月後のHb上昇はベースライン時のHb,その他の患者背景とは独立して死亡率の低下と関連した(0.73;0.63~0.85,p<0.0001):Eur Heart J. 2009; 30: 1331-9. PubMed
  • ベースライン時に浮腫を有していなかった4360例での検討:体重減少は死亡リスク上昇と独立して相関したが,体重増加に相関はみられない:Eur Heart J. 2006; 27: 2755-62. PubMed
  • AMI後の急性期間の可溶性腫瘍壊死因子受容体 I(sTNFR1)により心不全進展を予測できる可能性がある:J Am Coll Cardiol. 2005; 46: 2018-21. PubMed
  • ベースライン時の心房細動(AF)例は655例(12%),追跡期間中の新規AF発症は345例(7.2%)で,死亡,脳卒中のリスク上昇と関連:Eur Heart J. 2005; 26: 350-6. PubMed
  • ベースライン時のオステオプロテゲリン(OPG)高値と有害転帰と相関し,AMI後の死亡および心血管イベントの予測因子で調整後も独立した予測インディケーターである:J Am Coll Cardiol. 2004; 44: 1970-6. PubMed

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収載年月2000.09
更新年月2009.07