循環器トライアルデータベース

WOSCOPS
West of Scotland Coronary Prevention Study

目的 虚血性心疾患の既往のない高コレステロール血症男性患者において,HMG-CoA reductase阻害薬pravastatinの有効性を検討。

一次エンドポイントは冠動脈心疾患(CHD)死と非致死的心筋梗塞(MI)の複合。
二次エンドポイントはCHD死と非致死性MIをおのおの評価。
コメント N Engl J Med. 1995; 333: 1301-7.へのコメント
中等度の高コレステロール血症患者の一次予防試験において,6000例以上という大規模なレベルで,CHD死+致死性MIの予防効果を示し,かつ総死亡率についてもほぼ有意な減少をもたらすことを示した。また,それまで癌,自殺,暴力行為による死亡などが増えるのではないかとしていた議論に決着をつけたという意味で評価できる。(寺本
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は平均4.9年。
対象患者 6,595例。45~64歳で,平均コレステロール値が272mg/dLと中等度の高コレステロール血症患者。
治療法 pravastatin(Pr)群[40mg/日(分1),3,302例],またはプラセボ(Pl)群3,293例に割付け。
結果 累積試験中止率は1年目,2年目,3年目,4年目,5年目がPr群とPl群で15.5/14.9, 19.4/19.1, 22.7/22.5, 24.7/25.2, 29.6/30.8%。Pr群で総コレステロール-20%, LDL-C -26%, HDL-C +5%,トリグリセリド-12%の効果。Pl群では有意な変化がみられなかった。Pr群の一次エンドポイントの発症はPl群に比して,-31%(p<0.001),二次エンドポイントである非致死性MIは-31%,CHD死は-28%。総死亡率は22%の低下(有意差なし)。心血管疾患以外の死亡は両群間で差はなく,癌,自殺,外傷などにおいても有意差は認められなかった。
文献
  • [main]
  • Shepherd J et al for the west of Scotland coronary prevention study group: Prevention of coronary heart disease with pravastatin in men with hypercholesterolemia. N Engl J Med. 1995; 333: 1301-7. PubMed
  • [substudy]
  • LDL-C≧190mg/dLの一次予防例において,pravastatinによるLDL-C低下により試験期間(4.9年)のみならず,延長追跡した20年後の死亡,CVDリスクも低下した。
    LDL-C≧190mg/dLの一次予防例において,LDL-C低下による死亡の予防をプラセボ群と比較したpost-hoc解析の結果(本試験4.9年+延長観察期間=20年追跡)。
    ベースライン時に心血管疾患(CVD)のなかった5,529例をLDL-C値で層別し(<190mg/dL[2,969例:pravastatin群1,476例,プラセボ群1,493例;平均178mg/dL], ≧190mg/dL[2,560例:1,286例,1,274例]),本試験(4.9年)後,15年延長観察した20年後の死亡(全死亡,CAD死,CV死),冠動脈疾患(CAD),主要有害心血管イベント(MACE)とLDL-Cの低下,LDL-C値との関係を評価。
    LDL-C≧190mg/dL例のLDL-Cはベースライン206mg/dLから1年後およそ23%,終了時に19.5~20%低下したが,<190mg/dL例でも同様だった。
    本試験期間中に,LDL-C≧190, <190mg/dLいずれの例でもpravastatin群はプラセボ群よりCVDのリスクが有意に低下した(≧190mg/dL例でのCADハザード比:0.73[p=0.033], MACE:0.75[p=0.037],<190mg/dL例ではそれぞれ0.72, 0.76;交互作用p>0.9)。
    LDL-C≧190mg/dL例において,20年後もCAD(-26%, p=0.001),MACE(-19%, p=0.007),CAD死(-28%, p=0.020),CV死(-25%, p=0.009),全死亡(-18%, p=0.004)のリスクが有意に低下した。このプラセボ群とくらべたpravastatin群の有効性は,LDL-C>30%低下例あるいは>39mg/dL低下例のみだった。
    サブグループ:アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)10年予測リスク<7.5%の非糖尿病のLDL-C≧190mg/dL例(1,714例)の本試験期間のMACEは-38%(p=0.018),20年後は-27%(p=0.003):Circulation. 2017; 136: 1878-91. Epub 2017 Sep 6. PubMed
  • 一次予防患者において,hs-TnI値は5年・15年後の冠イベントの予測因子で,スタチン治療で低下した1年後のhs-TnI値はLDL-C低下とは独立して冠リスクを予測。
    一次予防患者において,心筋トロポニンが冠動脈イベントを予測できるか,またスタチン治療の影響があるのかを,ベースライン時と1年後の血漿高感度トロポニンI(hs-TnI)値を測定した3,318例(平均年齢55.1歳,hs-TnI中央値4.0ng/L[3.1~5.2ng/L])で検証した。
    hs-TnIは,冠リスク(非致死的心筋梗塞,冠動脈疾患死)を独立して予測した(第1[≦3.1] vs 第4四分位[≧5.2ng/L]:5年後のハザード比2.27;95%信頼区間1.42~3.65,15年後:1.54;1.16~2.05,いずれもp<0.001)。全死亡,心血管(CV)死とも関連したが,非CV死との関連はみられなかった。
    プラセボ群のhs-TnI値>25%低下例は>25%上昇例にくらべ冠リスクが5倍以上低下した(ハザード比0.29 vs 1.95,傾向p<0.001)。また,pravastatin群でもLDL-C値の低下は同様(22~28%)であったが,hs-TnI値最大低下例の上昇例にくらべた冠リスクは約5分の1だった(0.23 vs 1.08,傾向p<0.001)。
    1年後のhs-TnI値の低下はpravastatin群のほうがプラセボ群より有意に大きく(19% vs 6%),同群のベースライン時からの絶対変化は2.0ng/L。この1年後の変化は,5・15年後の冠リスクを独立して予測した。同群での冠リスク低下にLDL-Cの低下度による違いはなかった:J Am Coll Cardiol 2016; 68: 2719–28. PubMed
  • 20年後の結果-5年間のpravastatin治療から15年後も全死亡(特にCV死),CVDによる入院はpravastatin群のほうが少ない。
    4.9年の本試験終了後15年間または死亡までの20年追跡結果(pravastatin群18.6年,プラセボ群18.3年;20年後の平均年齢75歳)。試験終了から1,3,5年後のスタチン使用はpravastatin群28.6%→33.6%→38.7%,プラセボ群24.3%→29.4%→35.2%,以後10年間は記録なし。pravastatin群はプラセボ群にくらべ,全死亡(1,145例[34.7%]vs 1,253例[38.0%]:ハザード比0.87;95%信頼区間0.80~0.94, p=0.0007),心血管(CV)死(0.79;0.69~0.90, p=0.0004),冠動脈疾患(CAD)死(0.73;0.62~0.86, p=0.0002)が有意に少なかった。同群での脳卒中の低下,非CV死,癌死の増加はみられなかった。また,CAD再発・心筋梗塞・心不全・血行再建術による累積入院も同群が有意に少なかった:Circulation. 2016; 133: 1073-80. PubMed
  • 冠動脈疾患,狭心症,脳卒中の既往のない男性において,NT-proBNPはCVDを有意に予測。致死的イベントとより強く関連。
    心血管疾患(CVD)中リスクの高コレステロール血症を有する中年男性4,801例において,N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)とCVDの関係を評価した結果:中央値14.7年の追跡で,全 CVDは1,690例。NT-proBNP 値(28pg/mL)はCVDリスクの増加と有意に関連(1SD増加あたりの調整後ハザード比1.17;95%信頼区間1.11~1.23),この関連性は非致死的CVD(1.17;1.10~1.24)よりも,致死的イベント(1.34;1.19~1.52)とのほうが強かった(交互作用のp=0.022)。
    古典的リスク因子にNT-proBNPを追加すると,CVD予測のC統計量は0.013, continuous net reclassification index(NRI)は19.8%改善したが,C-反応性蛋白質(CRP)の追加ではそれぞれ0.009, 9.8%の改善だった。continuous NRIを用いてNT-proBNPで正しく再分類されたイベントは14.7%,一方CRPでは3.4%であった。
    軽微なECG異常,狭心症,硝酸薬投与,間欠性跛行その他のCVDの既往,脳血管障害の既往例を除いたclean CVDコホート(4,128例)の結果も同様であった。1年後のNT-proBNP値(1,154例)にスタチン群とプラセボ群間に差はみられなかった(24.7 vs 25.2pg/mL;ベースライン値で調整後p=0.57):Eur Heart J. 2013; 34: 443-50. PubMed
  • 5年間のpravastatin治療により10年後の冠動脈イベントが有意に低下。
    試験終了から5年後のスタチン治療例はpravastating群38.7%,プラセボ群35.2%(p<0.001)。
    試験終了から10年後の一次エンドポイントはpravastatin群8.6%,プラセボ群10.3%(p=0.02)。追跡期間全体(平均追跡期間14.7年)での一次エンドポイントはそれぞれ11.8%, 15.5%(p<0.001)。同様のpravastatin群での低下はCHD死+冠動脈イベントによる入院にもみられた。死亡(p=0.03),心血管死(p=0.01)も同群で抑制された。非血管死,癌による死亡および癌発症の増加はみられなかった:N Engl J Med. 2007; 357: 1477-86. PubMed
  • 白血球のテロメア長はCHDの予測因子で,スタチン系薬剤が最も有効な症例を同定できる:Lancet. 2007; 369: 107-14. PubMed
  • 一部改変したNCEPの定義による代謝症候群はCHDイベントを予測,新規糖尿病の発症は顕著に予測。代謝症候群のCRP値はそうでない例に比べ高かった:Circulation. 2003; 108: 414-9. PubMed
  • 非喫煙者においてcholesteryl ester transfer protein(CETP) TaqIB遺伝子型と心血管リスクは関連するが,pravastatinの有効性はこの遺伝子多型の影響によるものではない:Eur Heart J. 2003; 24: 1833-42. PubMed
  • レプチンはCHDの独立したリスク因子である:Circulation. 2001; 104: 3052-6. PubMed
  • C反応性蛋白(CRP),白血球数,フィブリノーゲン値は冠動脈イベントの強い予測因子であるが,年齢,収縮期血圧,リポ蛋白を考慮すると関連性は著明に低下。リポ蛋白結合ホスホリパーゼA2(PAF)は冠動脈心疾患の強いリスク因子:N Engl J Med. 2000; 343: 1148-55. PubMed
  • 入院2198例(33%)中1234例(28%)が心血管によるもの。pravastatinは心血管による入院率を21%低下:J Am Coll Cardiol. 1999; 33: 909-15. PubMed
  • ベースライン時の脂質値の差はCHD発症の低下に影響しない:Circulation. 1998; 97: 1440-5. PubMed
  • 10000例に pravastatinを投与すると5年間で318例が心血管疾患に罹患するのを防げ(NNTは31.4),2000万ポンドのcost benefit:BMJ. 1997; 315: 1577-82. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2017.10