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心筋梗塞(MI)既往があり,平均的コレステロール値の患者において,HMG-CoA reductase阻害薬pravastatinでコレステロールを低下させることにより,冠動脈イベントに与える効果を検討する。 一次エンドポイントは,致死的冠動脈イベントおよび非致死的MI。 |
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コレステロールが240mg/dL未満という比較的低い患者でも,コレステロール低下により二次予防は可能であることを示した試験である。ガイドラインにあるコレステロール200mg/dL以上は治療を要するということの根拠となりうるエビデンスである。しかし,LDL-Cが125mg/dL以下の場合には治療効果がないとする結論は,各群の症例数が400以下であることを念頭において慎重に判断すべきである。(寺本) |
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無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設(米国,カナダの80施設),intention-to-treat解析。 |
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追跡期間は平均5年(4~6.2年)。 |
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4159例。21~75歳。3~20か月前に急性心筋梗塞を発症した総コレステロール(TC)が240mg/dL未満,LDL-Cが115~174mg/dLの患者,非症候性心不全。 |
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pravastatin群(40mg/日,2081例),またはプラセボ群(2078例)にランダム化。NCEP(National Cholesterol Education Program)ステップ1の食事療法。 |
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pravastatin群はプラセボ群と比較してTC-20%, LDL-C-28%, HDL-C+5%,トリグリセリド-14%と有意な効果が得られた。脱落例はプラセボ群で8%,pravastatin群で2%。一次エンドポイントはpravastatin群-24%(p=0.003),冠動脈疾患死は-20%(p=0.1),総死亡には有意な影響はみられなかった。冠動脈イベントの発生は男性で-20%,女性で-46%,また60歳以上の高齢者においても有意な効果が観察された。しかし,ベースラインのLDL-Cが125mg/dL未満であると,治療しても冠動脈イベントの発生を有意に抑制しなかった。 |
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- [main]
- Sacks FM et al for the cholesterol and recurrent events trial investigators: The effect of pravastatin on coronary events after myocardial infarction in patients with average cholesterol levels. N Engl J Med. 1996; 335: 1001-9. PubMed
- [substudy]
- 心筋梗塞生存例と一般住民において血清アルカリホスファターゼ(AlkP)高値は予後不良と関連。
全死亡率とAlkPの関係をCAREの心筋梗塞(MI)症例とNHANES IIIの一般住民データで検証:CARE(4,115例):AlkP値は全死亡と関連(傾向p=0.02);最高三分位群(>99IU/L[1,374例]) vs 最低三分位群(<80IU/L[1,349例])の調整ハザード比1.43(95%信頼区間1.08~1.89)。
NHANES III(14,176例):AlkP値は全死亡,心血管死と関連(各傾向p=0.006, p=0.038);最高三分位群(>87IU/L[6,063例]) vs 最低三分位群(<68.2IU/L[3,890例])の全死亡ハザード比1.27(1.06~1.52)。
CARE, NHANES IIIともにAlkP値と死亡の関係はCKDの影響を受けず,血清リン酸塩濃度が高い症例で顕著であった:Circulation. 2009; 120: 1784-92. PubMed
- 赤血球分布幅(red cell distribution width:RDW)は死亡,心血管イベントリスクと関連。
追跡期間(中央値)59.7か月で376例が死亡。RDWが1%上昇ごとの全死亡のハザード比は1.14(95%信頼区間1.05~1.24)。RDWと死亡の間に段階的関連が認められた(p for trend=0.001):4分位の最高値の死亡のハザード比は1.78(vs 第1分位)。RDW高値は,冠動脈死,非致死的心筋梗塞,症候性心不全新規発症,脳卒中のリスクが上昇:Circulation. 2008; 117: 163-8. PubMed
- 血清phosphate値は死亡および心血管リスクと有意に相関した:Circulation. 2005; 112: 2627-33. PubMed
- 心不全(HF)既往のないMI(3860例)の検討:追跡期間5年で243例(6.3%)がHFにより入院。心不全進展例の死亡リスクは著明に上昇(ハザード比10.2)。MI再発はHF進展リスクを増加(4.9)。HFの最重要予測因子は年齢とEFで,他に高血圧・MI既往,試験開始時の心拍数であった:J Am Coll Cardiol. 2003; 42: 1446-53. PubMed
- 中等度の慢性腎機能障害(クレアチニンクリアランス≦75mL/分)例においてpravastatinは安全に心血管イベントを予防する:Ann Intern Med. 2003; 138: 98-104. PubMed
- 大型LDL-Cは冠動脈イベントの独立した予測因子であるが,LDL-C値上昇例に有効な治療は大型LDL-C関連リスクの治療にも有効であるため,試験開始時のLDL-Cサイズの確認は有用でないと思われる:JAMA. 2001; 286: 1468-74. PubMed
- platelet PlA2およびACE遺伝子のD多型は冠動脈イベント再発のリスク因子か:Am J Cardiol. 2001; 88: 347-52. PubMed
- 冠動脈イベント再発リスクが高いMI既往例では,TNF-α(tumor necrosis factor-α)の血漿濃度が持続的に上昇:Circulation. 2000; 101: 2149-53. PubMed
- 5年の経過中プラセボ群ではCRP(C-reactive protein)は増加傾向にあったが,pravastatin群では脂質の動きとは相関なくCRPは有意な低下を示した。pravastatinの脂質低下作用以外の作用を示唆するものである:Circulation. 1999; 100: 230-35. PubMed
- 4159例中2245例が血行再建術を受けた。pravastatin群において有意に予後の改善がみられた:J Am Coll Cardiol. 1999; 34: 106-12. PubMed
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