循環器トライアルデータベース

HOPE
Heart Outcomes Prevention Evaluation

目的 左室不全あるいは心不全を有していない心血管イベント発症の高リスク症例において,ACE阻害薬ramiprilの有用性とビタミンEの有用性を検討。
一次エンドポイントは心筋梗塞(MI)+脳卒中+心血管死。
コメント 対象例の半数以上が正常血圧である。すなわちACE阻害薬は高血圧の有無に関わらず,心血管イベントを抑制することを証明した点で重要な報告である。ACE阻害薬は降圧薬というより心保護薬という認識が必要。ビタミンEの有用性は証明されなかった。(桑島
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,2×2 factorial,多施設(19か国267施設:カナダ129施設,アメリカ27施設,西ヨーロッパ14か国76施設,アルゼンチン,ブラジル30施設,メキシコ5施設)。
期間 追跡期間はramipril/プラセボ比較試験が平均5年,ビタミンE/プラセボ比較試験が平均4.5年。
対象患者 55歳以上(平均年齢66歳)の冠動脈疾患,脳卒中,末梢血管疾患歴のある者,あるいは他の心血管危険因子(高血圧,総コレステロール値の上昇,低HDL-C,喫煙,微量アルブミン尿)を有する糖尿病患者。ramipril/プラセボ比較試験は9297例,ビタミンE/プラセボ比較試験は9541例。
治療法 ramipril/プラセボ比較試験:ramipril群(4645例) 2.5mg/日を1週間投与後,5mg/日を3週間,その後10mg/日投与,またはプラセボ群4652例にランダム化。さらにビタミンE群(400IU/日),あるいはプラセボ群にランダム化。サブスタディ(用量試験)において高用量(10mg/日),低用量(2.5mg/日),プラセボの3群(各群244例)で比較。
ビタミンE/プラセボ比較試験:ビタミンE群 400IU/日(食事摂取)4761例,またはプラセボ群4780例にランダム化。さらにramipril群(10mg/日),あるいはプラセボ群に割付け。
結果 ramipril/プラセボ比較試験:一次エンドポイントの発生はramipril群651例(14.0%),プラセボ群826例(17.8%)であった[相対リスク(RR)0.78, 95%信頼区間(CI) 0.70-0.86, p<0.001]。疾患別では心血管死(6.1% vs 8.1%, RR 0.74, p<0.001),MI(9.9% vs 12.3%, RR0.80, p<0.001),脳卒中(3.4% vs 4.9%, RR0.68, p<0.001),全死亡(10.4% vs 12.2%, RR0.84, p=0.005)。二次エンドポイントに関しても,血行再建術(16.0% vs 18.3%, RR 0.85, p=0.002),心停止(0.8% vs 1.3%, RR 0.63, p=0.02),心不全(9.0% vs 11.5%, RR 0.77, p<0.001),糖尿病関連合併症(6.4% vs 7.6%, RR0.84, p=0.03)のいずれもramipril群で有意に低かった。
-用量試験:一次エンドポイントの発生は,低用量群で34例(13.9%),高用量群で31例(12.7%),プラセボ群で41例(16.8%)であった。この結果を加えても全体の結果に変化はなかった(RR 0.78, 95%CI 0.70-0.86)。
ビタミンE/プラセボ比較試験:一次エンドポイントの発生はビタミンE群で772例(16.2%),プラセボ群739例(15.5%)であった(RR 1.05, 95%CI 0.95-1.16, p=0.33)。疾患別でも有意差は認められなかった。
文献
  • [main]
  • The heart outcomes prevention evaluation study investigators: Effects of an angiotensin-converting-enzyme inhibitor, ramipril, on cardiovascular events in high-risk patients. N Engl J Med. 2000; 342: 145-53. PubMed
  • The heart outcomes prevention evaluation study investigators: Vitamin E supplementation and cardiovascular events in high-risk patients. N Engl J Med. 2000; 342: 154-60. PubMed
  • [substudy]
  • 1標準偏差増加ごとのpro-brain natriuretic peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド:NT-proBNP)のハザード比は1.72(p<0.0001),可溶性細胞間接着分子-1は1.46(p=0.0003),微量アルブミン尿は1.55(p=0.0004),可溶性インターロイキン1受容体拮抗は1.30(p=0.02),フィブリノーゲンは1.31(p=0.02)で一次エンドポイントと有意に相関するが,従来の危険因子と同等の予測因子はNT-proBNPのみである:Circulation. 2006; 114: 201-8. PubMed
  • 中等度の腎機能障害(クレアチニン≧1.4mg/dL)例は心血管イベントのリスクが有意に上昇した:Ann Intern Med. 2001; 134: 629-36. PubMed
  • 追跡期間を2.6年延長した4528例(「HOPE-The Ongoing Outcomes;HOPE-TOO study:1999年4月16日~2003年5月26日):終了時のACE阻害薬投与率はramipril群72%,プラセボ群68%。延長追跡期間中ramipril群ではMIの相対リスクがさらに19%,血行再建術は16%,新規糖尿病は34%低下し,ベースライン時のリスク,併用治療にかかわらず血管イベントも同様の低下がみられた:Circulation. 2005; 112: 1339-46. PubMed
  • 追跡期間を延長したHOPE-The Ongoing Outcomes (HOPE-TOO:1999年4月16日~2003年5月26日)とHOPE(1993年12月21日~1999年4月15日)を合わせた結果:ビタミンEをより長期に投与しても癌,主要な心血管イベント抑制効果はなく,心不全のリスクが上昇する可能性がある:JAMA. 2005; 293: 1338-47. PubMed
  • ramiprilは心不全あるいは顕在収縮不全を発症することなく致死的および非致死的重症不整脈イベントを低下させる:Circulation. 2004; 110: 1413-7. PubMed
  • 血圧がコントロールされEFが保たれている例でにおいても,ramiprilは左室の構造および機能に有効である:J Am Coll Cardiol. 2004; 43: 2200-6. PubMed
  • ramiprilは心不全の進展を有意に抑制する:Circulation. 2003; 107: 1284-90. PubMed
  • サイトメガロウイルス(CMV)は心筋梗塞,脳卒中,心血管死亡のリスクのわずかな上昇と関連するが,クラミジア・ニューモニエ,ヘリコバクター・ピロリ菌,A型肝炎ウイルス(HAV)は関係しない:Circulation. 2003; 107: 251-7. PubMed
  • 患者1名当たりのコストはアメリカ:ramipril群13250ドル,プラセボ群13631ドル,カナダ:8702カナダドル,8588カナダドルで両国とも両群間差は認められなかった:Circulation. 2003; 107: 960-5. PubMed
  • 穏やかな降圧でもramiprilは脳卒中を抑制する:BMJ. 2002; 324: 1-5. PubMed
  • カナダコホートにおいてaspirin抵抗性(トロンボキサン産出の不完全な抑制)は心血管イベント再発生のリスクを上昇させるかを検討。トロンボキサン産出のマーカーである尿中11 dehydro-thromboxane B2値はMI,心血管死を予測する:Circulation. 2002; 105: 1650-5. PubMed
  • 血清中のheat shock protein 65(HSP 65)抗体価は続けて発症する心血管イベントと関係がある:Circulation. 2002; 106: 2775-80. PubMed
  • 心血管リスクの高い女性においてramiprilは有効であった:J Am Coll Cardiol. 2002; 40: 693-702. PubMed
  • SECURE(Study to evaluate carotid ultrasound changes in patients treated with ramipril and vitamin E):高リスク例におけるアテローム性動脈硬化症の進展に対するramiprilとビタミンEの有効性を検討(732例):Bモード超音波頸動脈撮影で動脈硬化の進展を評価。平均内膜-中膜厚はプラセボ群で0.0217mm/年,ramipril 2.5mg/日群で0.0180mm/年,10mg/日群で0.0137mm/年と進展はramipril高用量群で有意に抑制された(p=0.033)。ビタミンE群とプラセボ群間に差は見られなかった:Circulation. 2001; 103: 919-25. PubMed
  • ramiprilは心電図所見で認められる左室肥大(ECG-LVH)の進展を抑制し退縮させるが,本効果は降圧効果とは独立していた。ECG-LVHの変化は死亡,MI,脳卒中,うっ血性心不全のリスクと関係していた:Circulation. 2001; 104: 1615-21. PubMed
  • ramiprilは新規糖尿病の低発症率と関係がある:JAMA. 2001; 286: 1882-5. PubMed
  • 臨床治療に影響を与えた他の重要なACE阻害薬試験(SOLVD Treatment, SAVE, AIRE),スタチン試験(4S, CARE, LIPID)と比較:ramiprilの有効性はaspirin,スタチン,β遮断薬,降圧薬のように有効性が証明されている予防薬と同等である:Eur Heart J. 2001; 22: 1307-10. PubMed
  • ramiprilは冠動脈イベント(MI,狭心症の悪化および新規発症)および血行再建術のリスクを低下した:Circulation. 2001; 104: 522-6. PubMed
  • 糖尿病,非糖尿病においてアルブミン尿はその程度にかかわらず心血管イベントのリスク因子である。尿アルブミン/クレアチニン比が上昇するとリスクも上昇:JAMA. 2001; 286: 421-6. PubMed
  • MICRO HOPE substudy(Microalbuminuria, cardiovascular, and renal outcomes HOPE):糖尿病を有する患者における微量アルブミン尿症,心血管疾患腎症の転帰:Lancet. 2000; 355: 253-9. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2006.12