循環器トライアルデータベース

ACST-1
Asymptomatic Carotid Surgery Trial

目的 無症候性頸動脈狭窄例において,即時頸動脈内膜切除術(CEA)と長期間待機CEAの有効性と安全性を比較する。主なエンドポイントは周術期の死亡率および合併症(脳卒中,心筋梗塞)の発症率および非周術期脳卒中。
コメント 頸動脈内膜切除術(CEA)は周術期に致死的/介護を要する脳卒中を生じ,術後の血栓塞栓症のリスクを永久には取り除けないが,症候性高度頸動脈狭窄例に対する長期的効果は1991年,ECSTとNASCETにより明らかとなっている。無症候性高度狭窄例に対するCEAは,一過性脳虚血発作や介護を要さない脳卒中の発生率を低下させるが致死的/介護を要する脳卒中は低減しないと報告されている(VA,ACAS trial)。本研究は1993年より10年間かけて多数例をエントリーし,無症候性例に対するCEAの長期的効果(脳卒中発生率)を検討している。本論文は途中経過であるが,75歳未満の高度狭窄例では即時CEAが明らかに脳卒中リスクを低下させている。本研究はACASより症例数が多く観察期間が長いので両者の結果が異なると思われる。サブグループ解析では,コレステロール値,高血圧,陳旧性心筋梗塞や糖尿病の有無による有用性の違いはみられていない。患側だけではなく対側の頸動脈支配領域の脳卒中の発生率も明らかに低下しているのは,脳内の側副血行路(Willis環)と関連しているのであろう。本研究の75歳以上の無症候性例は650例と少なく偽陰性の可能性もあるが,生命予後を考えるとCEAの適応は限られる。しかし,症候性であればCEAの有用性は2~3年で出現するので,75歳以上でも施行する意義はある。(星田
デザイン 無作為割付け,多施設(30か国126施設)。
期間 平均追跡期間は3.4年。
対象患者 3120例。重度(頸動脈エコーにて60%以上の頸動脈径の減少)と考えられる片側あるいは両側頸動脈狭窄があり,その狭窄に起因する脳卒中,一過性脳虚血発作,関連する神経症状が過去6か月ない患者。
除外基準:同側CEAの既往,最近発症の心筋梗塞などのために外科的リスクが高いと思われるもの,心源性塞栓を発症する可能性があるものなど。
治療法 即時CEA群(1560例):できるだけ早くCEAを施行,長期間待機CEA群(1560例):頸動脈灌流領域の虚血症状が発症しない,あるいは明確な手術適応がない限り実施しない。両群とも適切な薬物療法(抗血小板療法,降圧療法,脂質低下療法など)を実施した。
結果 CEA施行例は即時CEA群1348例,待機CEA群229例で,1年以内の実施例はそれぞれ89.3%, 6.9%,5年以内は91.8%, 20.0%。周術期の脳卒中あるいは死亡は40例 vs 11例でCEA施行例は2.8% vs 4.5%。30日以内の脳卒中あるいは死亡のリスクは3.1%。
周術期を除いた脳卒中5年リスクは即時CEA群3.8%,待機CEA群11.0%;有益差(gain)7.2%[95%信頼区間(CI)5.0~9.4, p<0.0001]。このCEA群の有効性は主に頸動脈領域の脳梗塞を抑制したことにより(2.7% vs 9.5%;gain 6.8%(95%CI 4.8~8.8, p<0.0001),うち半数は介護が必要な脳卒中あるいは死亡であった[1.6% vs 5.3%;gain 3.7%(95%CI 2.1~5.2, p<0.0001]。
周術期および非周術期を合わせた5年リスクは全脳卒中が6.4% vs 11.8%(gain 5.4%(95%CI 3.0~7.8, p<0.0001),致死的あるいは介護を要する脳卒中は3.5% vs 6.1%[gain 2.5%(95%CI 0.8~4.3, p=0.004],致死的脳卒中は2.1% vs 4.2%[gain 2.1%(95%CI 0.6~3.6, p=0.006]であった。
CEAの有効性は男性,頸動脈狭窄が70%, 80%, 90%,<65歳,65~74歳で有意であった。
★考察★70%以上の頸動脈狭窄を有する75歳未満の無症候性患者において,即時CEAは5年脳卒中発症リスクを12%から約6%へ半減させた。
文献
  • [main]
  • Halliday A et al for the MRC asymptomatic carotid surgery trial (ACST) collaborative group: Prevention of disabling and fatal strokes by successful carotid endarterectomy in patients without recent neurological symptoms; randomised controlled trial. Lancet. 2004; 363: 1491-502. PubMed
  • [substudy]
  • 75歳未満の無症候性頸動脈狭窄患者における即時頸動脈内膜切除術(CEA)は10年後も脳卒中リスクを低下。
    非周術期の全脳卒中:5年後(即時CEA群4.1% vs 待機的CEA群10.0%:gain 5.9%;95%信頼区間4.0~7.8, p<0.0001)→10年後(10.8% vs 16.9%:6.1%;2.7~9.4, p=0.0004)。
    全脳卒中,周術期死亡:6.9% vs 10.9%:4.1%;2.0~6.2, p=0.0001→13.4% vs 17.9%:4.6%;1.2~7.9, p=0.009。
    即時CEA群の脳卒中予防効果は半数近くが介護を要する脳卒中あるいは致死的脳卒中の抑制であった。
    治療状況は両群間に差はなく,ほとんどの例が抗血栓療法,降圧治療を受けていた。netのベネフィットは脂質治療の有無,性差を問わず大きく,登録時の年齢が75歳未満の症例でも有意であったが,75歳以上ではちがった:Lancet. 2010; 376: 1074-84. PubMed
  • 選択的頸動脈造影が増加:Br J Surg. 1999; 86: 690-1. PubMed
  • 脳卒中のハイリスク患者を見出し,同定できるか:Eur J Vasc Endovasc Surg. 1998; 16: 59-64. PubMed
  • 反対側に前駆症状が出現する場合の脳梗塞の罹患率:Int Angiol. 1998; 17: 187-93. PubMed
  • 性,年齢,平均血圧,総コレステロール,糖尿病,冠動脈疾患による無症候性脳梗塞の罹患率:Int Angiol. 1998; 17: 194-200. PubMed

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収載年月2000.09
更新年月2010.10