循環器トライアルデータベース

UKPDS 38
UK Prospective Diabetes Study 38

目的 高血圧合併2型糖尿病患者において,厳格な血圧管理はより緩やかな血圧管理に比べて,大血管および細小血管合併症を予防するかを検討する。
一次エンドポイントは次の3つ:(1)糖尿病関連エンドポイントの初発(突然死,高血糖/低血糖による死亡,致死的/非致死的心筋梗塞[MI],狭心症,心不全,脳卒中,腎不全,指1本以上の切断,硝子体出血,網膜光凝固治療,片眼の失明,白内障摘出),(2)糖尿病関連死(MI死,突然死,脳卒中死,末梢血管疾患死,腎疾患死,高血糖/低血糖による死亡),(3)全死亡。
コメント 数あるUKPDSの中で最も被引用回数が多いであろうと考えられるUKPDS 33‐Intensive blood-glucose control with sulfonylurea or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes. (Lancet. 1998; 352: 837-53. PubMed) は2型糖尿病の血糖コントロールを厳格に行うことが糖尿病関連の合併症を抑制できるかどうかを検討する試験で,UKPDS 38と対象もエンドポイントも比較的似通っている。しかし,UKPDS 33で有意差の認められなかった糖尿病関連エンドポイントや糖尿病関連死,脳卒中がUKPDS 38では有意,すなわち,状況によっては糖尿病に付随する合併症の抑制には血糖コントロールそのものに勝るとも劣らぬほど血圧管理が重要である可能性を示すデータである。(弘世
デザイン 無作為割付け,多施設(英国の20施設),intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は8.4年(中央値)。
登録期間は1987~1991年。
対象患者 1,148例。25~65歳の新規診断糖尿病患者のうち,降圧治療を受けていない血圧≧160/90mmHgの患者,もしくは降圧治療を受けている≧150/85mmHgの患者。
除外基準:ケトン尿>3mmol/L,狭心症/心不全例,血清クレアチニン>1.978mg/dL,レーザー治療を要する網膜症,悪性高血圧,臨床的に厳格な血圧管理が必要なもの(脳卒中の既往,進行性高血圧[accelerated hypertension],心不全,腎不全)もしくはβ遮断薬の投与が必要(過去1年以内のMI,狭心症),重度の血管疾患(大血管イベント>1回),重度の併存疾患またはβ遮断薬禁忌(喘息,間欠性跛行,足部潰瘍,切断)など。
■患者背景:平均年齢(厳格管理群56.4歳,通常管理群56.5歳),男性(54%, 58%),白人(86%, 88%),BMI(29.8kg/m², 29.3 kg/m²),空腹時血糖*(両群ともに133.2mg/dL), HbA1c(6.9%, 6.8%),血圧(159/94mmHg, 160/94mmHg),降圧治療者(36%, 37%),喫煙状況(非喫煙:両群ともに38%,過去喫煙者:39%, 40%,現喫煙者:23%, 22%),尿中アルブミン(≧50mg/L:18%, 16%,≧300mg/L:3%, 4%),網膜症(≧20/20:23%, 29%,≧35/35:7%, 10%),総コレステロール(212.7mg/dL, 216.6mg/dL),HDL-C(両群ともに42.54mg/dL),LDL-C(両群ともに139.21mg/dL),トリグリセライド(両群ともに幾何平均141.7mg/dL),糖尿病罹病期間*(2.7年,2.5年)。
* 中央値
糖尿病治療:食事療法29%,SU薬34%,metformin(8%, 7%),併用療法5%,インスリン(23%, 24%)。
治療法 厳格降圧群(758例):目標血圧を<150/85mmHgとして,ACE阻害薬captopril(50~100mg/日)またはβ遮断薬atenolol(50~100mg/日)を投与。
通常降圧群(390例):目標血圧を<180/105mmHgとして,ACE阻害薬とβ遮断薬の投与は避けて治療。
目標血圧に到達しない場合は,frusemide 20mg/日(最大40mg×2回/日)→ nifedipine徐放剤10mg(最大40mg)×2回/日→ methyldopa 250mg(最大500mg)×2回/日→ prazosin 1mg(最大5mg)×3回/日を併用。
結果 [降圧および血糖管理]
9年間の追跡期間中の平均血圧は厳格降圧群144/82mmHg,通常降圧群154/87mmHgと,厳格降圧群で有意に降圧した(群間差:SBP 10mmHg,95%信頼区間9~12mmHg;DBP 5mmHg,4~6mmHg;ともにp<0.0001)。
HbA1c値は有意な両群間差は認められなかった(1~4年:両群ともに7.2%,5~8年:8.3% vs 8.2%)。
[一次エンドポイント]
厳格管理群では通常管理群に比べて下記のエンドポイントが有意に低かった。
・糖尿病関連エンドポイント:絶対リスク50.9 vs 67.4イベント/1000人・年;厳格管理群の相対リスク0.76, 95%信頼区間0.62~0.92(p=0.0046)。
・糖尿病関連死:13.7 vs 20.3イベント/1000人・年;0.68, 0.49~0.94(p=0.019)。
・脳卒中:6.5 vs 11.6イベント/1000人・年;0.56, 0.35~0.89(p=0.013)。
・細小血管疾患:12.0 vs 19.2イベント/1000人・年;0.63, 0.44~0.89(p=0.0092)。
厳格降圧群では通常降圧群に比べて,有意には至らなかったがMIのリスクが21%低下し,全死亡のリスクが18%低下した。
網膜症の2段階以上の悪化リスクは7.5年間(中央値)で厳格降圧群で34%低下(p=0.0038),視力の3段階以上の低下リスクは9年間で47%低下した(p=0.0036)。
[有害事象]
低血糖の累積発生率(6.1% vs 4.4%),平均増加体重(1.3kg vs 2.0kg)には有意な群間差は認められなかった。
★考察★高血圧合併2型糖尿病患者における厳格な血圧管理は糖尿病関連死,糖尿病関連合併症,糖尿病網膜症の進展,視力低下のリスクを臨床的に有意に低下した。
文献
  • [main]
  • Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK prospective diabetes study group. BMJ. 1998; 317: 703-13. PubMed

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収載年月1999.09
更新年月2011.06