ESH2005 欧州心臓病学会 スウェーデン/ストックホルム 9/3〜7
ASCOT-BPLA
The Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-Blood Pressure Lowering Arm

心血管イベントの危険因子を3つ以上有する高血圧患者において,amlodipineをベースとした降圧療法は,脳卒中や冠動脈疾患などの主要心血管イベント,全死亡,新規糖尿病発症に対する抑制効果でatenololをベースとしたthiazideとの併用療法を凌ぐ。

presenter: Bjorn Dahlof, MD (University Hospital/Ostra, Sweden),
Peter S. Sever, MD (Imperial College, England)
Neil R. Poulter, MD (Imperial College, England)
Hanse Wedel, PhD (Nordic School of Public Health, Goteborg, Sweden)
  目 的  
 
心血管イベントの危険因子を有する高血圧患者において,冠動脈疾患(CHD)一次予防効果を,新規降圧薬併用療法(Ca拮抗薬amlodipineおよびACE阻害薬perindopril;Am(+P)群)と従来降圧薬併用療法(β遮断薬atenololおよび利尿薬bendroflumethiazide;At(+T)群)とで比較する。
  エンドポイント  
 
一次エンドポイント
非致死的心筋梗塞(MI)および致死的CHD
二次エンドポイント
非致死的MI(症候性のみ)および致死的CHD
全死亡
全CHDイベント
全心血管イベントおよび血行再建術の施行
心血管死
致死的/非致死的 脳卒中
致死的/非致死的 心不全
  コメント  
 


高血圧と臓器障害に関してthe lower the betterが明らかになり,臨床の現場においてはより低い降圧目標値を達成するためには併用療法が不可欠になってきている。したがって,どの併用療法が心血管合併症予防および副作用防止の観点からもっとも有効なのかを検討する試験が求められてきている。その意味で長時間作用型Ca拮抗薬アムロジピンとACE阻害薬ペリンドプリル併用群(Am(+P)群)vs. β遮断薬アテノロールとサイアザイド系利尿薬併用群(At(+T)群)の冠動脈疾患(CHD)の一次予防を比較した本試験は新しい時代の降圧試験の幕開けとなるものである。

結果は,単剤比較試験で言われてきたように,「心血管保護において降圧に優るものなし」を確認するものであり,24時間を通しての確実な降圧が心血管予防においては不可欠であることを追認するものであった。特に,本試験の対象のように,危険因子を複数有するリスク度の高い高血圧患者においては速やか,かつ厳格な血圧管理こそが血管を保護する上でもっとも重要であることを確認したものとして評価できる。

本試験ではアムロジピンとペリンドプリルというT/P比が大きい降圧薬の組み合わせであることは注目すべきである。したがってどのCa拮抗薬とACE阻害薬(あるいはARB)の組み合わせでも利尿薬とβ遮断薬という古典的治療に勝てるというわけではないのである。有用性が証明されたのはアムロジピンとペリンドプリルという長時間作用型の代表的降圧薬の併用である。

At(+T)群の死亡率が高く試験は中断されたために,一次エンドポイントである非致死的心筋梗塞+致死的心血管イベントにおいては両群間に有意差はみられなかったが,5年半ほどの追跡で総死亡の11%,心血管死24%の差は大きい。高齢者にβ遮断薬が不利であることはLIFE試験からも明らかなのでAt(+T)群に不利だった点もあるだろうが,やはり降圧度の差がCHD,脳卒中,死亡の抑制に影響したと思われる。

世界的に予防に重きが置かれるようになってきている現在,心血管イベントを発症させないような治療の重要性は高まる一方である。Am(+P)群はCHDの一次予防に成功した点も評価できる。またAm(+P)群で糖・脂質代謝への悪影響はみられないことから,メタボリックシンドロームを抑制し,心血管を守るという点からもこの併用療法には期待できる。ただ本試験がデザインされたのは数年前のため,現在利尿薬とβ遮断薬の併用治療は実際的ではないことも事実である。日常臨床でよく行われているような併用療法の長期的比較試験が期待される(桑島)。

   
  デザイン  
 
PROBE法(Prospective, Randomized, Open, Blinded-Endpoint),多施設(北欧,英国,アイルランド),intention-to-treat解析。
  期 間  
 
追跡期間は5.5年(中央値)。
2004年10月データ安全モニタリング委員会はAt±T群において全死亡が多く,またいくつかの二次エンドポイントの悪化が認められたことから試験中止を勧告した。運営委員会は勧告を受けて中止を決定し,同年12月から2005年6月にすべての治験参加医師が登録患者に試験終了のための来院を呼びかけた。
  対象患者  
 


19,257例(Am(+P)群63.0歳,At(+T)群63.0歳)。40〜79歳;未治療高血圧患者はSBP≧160 mmHg and/or DBP≧100 mmHg,既治療高血圧患者はSBP≧140 mmHg and/or DBP ≧90 mmHg;MIの既往のないものあるいは現在CHDではないもの;心血管イベントの危険因子を3つ以上有するもの。
■患者背景:平均年齢(Am(+P)群63.0歳,At(+T)群63.0歳),男性(77%,77%),白人(95%,95%),平均血圧(164.1/94.8mmHg,163.9/94.5mmHg),心拍数(71.9拍/分,71.8拍/分),BMI (28.7,28.7)。治療状況;未治療例(19%,19%),1剤での降圧治療例 (44%,45%),2剤以上(36%,36%),脂質低下薬(11%,10%),aspirin(19%,19%)。保有危険因子;55歳以上84%,男性77%,微量アルブミン尿/蛋白尿61%,喫煙30%,CHD家族歴27%。

  治療法  
 
目標降圧値:非糖尿病例は<140/90mmHg,糖尿病例は<130/80mmHg。
Ca拮抗薬amlodipineをベースとしたACE阻害薬perindoprilとの併用治療群(Am(+P)群9639例):amlodipine 5〜10mg→perindopril 4〜8mgを追加→doxazosin GITS 4〜8mgを追加→moxonidine/ spironolactoneを追加。
β遮断薬atenololをベースとした利尿薬bendroflumethiazide (BFZ)との併用治療群(At(+T)群9618例):atenolol 50〜100mg→BFZ(カリウム併用)1.25〜2.5mgを追加→doxazosin GITS 4〜8mgを追加→moxonidine/ spironolactoneを追加。
  結 果  
 
  • 血圧は試験開始時から終了時までにAm(+P)群 で164.1/94.8mmHg→136.1/77.4mmHg,At(+T)群で163.9/94.5mmHg→137.7/79.2mmHgへ降下した。両群間の平均降圧差(Am(+P)群マイナスAt(+T)群)は−2.7/−1.9mmHg(p<0.0001)。
  • トリグリセリドとHDL-CはAm(+P)群 で有意に改善した(p<0.0001)。
  • BMI(p=0.0001),血糖値(p<0.0001),血清クレアチニン(p<0.0001)はAm(+P)群 で有意に改善した。
    一次エンドポイント
  • 一次エンドポイント発症数は903例(Am(+P)群429例,At(+T)群474例)。Am(+P)群で10%低下したが両群間に有意差は認められなかった(ハザード比[HR]0.90;95%信頼区間0.79〜1.02,p=0.1052)。
    二次エンドポイント
  • 非致死的MI(症候性のみ)および致死的CHDはAm(+P)群390例 vs At(+T)群444例(HR 0.87,p=0.0458)。
  • 全CHDイベントは753例 vs 852例(HR 0.87,p=0.0070)。
  • 全心血管イベント+血行再建術は1362例 vs 1602例(HR 0.84,p<0.0001)。
  • 全死亡は738例 vs 820例(HR 0.89,p=0.0247)。
  • 心血管死は263例 vs 342例(HR 0.76,p=0.0010)。
  • 全脳卒中は327例 vs 422例(HR 0.77,p=0.0003)。
  • 全心不全は134例 vs 159例(HR 0.84,p=0.1257)。
    三次エンドポイント
  • 無症候性心筋梗塞は42例 vs 33例(HR1.27,p=0.3089)。
  • 不安定狭心症は73例 vs 106例(HR 0.68,p=0.0115)。
  • 慢性安定狭心症は205例 vs 208例(HR 0.98,p=0.8323)。
  • 末梢血管疾患は133例 vs 202例(HR 0.65,p=0.0001)。
  • 生命にかかわる不整脈は27例 vs 25例(HR 1.07,p=0.8009)。
  • 新規発症糖尿病は567例 vs 799例(HR 0.70,p<0.0001)。
  • 新規発症腎不全は403例 vs 469例(HR 0.85,p=0.0187)。
    Post-hoc解析
  • 一次エンドポイント+血行再建術は596例 vs 688例(HR 0.86,p=0.0058)。
  • 心血管死+MI+脳卒中は796例 vs 937例(HR 0.84,p=0.0003)。
    有害事象
  • 治療中止につながる有害事象の発症はトータルで2358例 vs 2402例,重症例は162例 vs 254例(p<0.0001)。
■両群間の転帰の違いの理由として考えられるもの
Am(+P)群とAt(+T)群の血圧の差。
Am(+P)群の降圧以外の有益な作用,At(+T)群の降圧以外の不利な作用,At(+T)群とスタチンとの有害な相互作用,Am(+P)群とスタチンとの有益な相互作用など。

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収録年月2005.09