MRC/BHF Heart Protection Study
presenter: Rory Collins, MD(Oxford University, Oxford, UK)

目的 心血管イベント高リスク例において,HMG-CoA reductase阻害薬simvastatinに抗酸化ビタミンを補充した場合の死亡率に及ぼす効果を検討する。
コメント NCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program- Adult Treatment Panel III)では,最も高リスク群をFramingham Heart studyの結果に基づき10年間のイベント発症リスクが20%を超えるものとし,「糖尿病」や「虚血性心疾患の既往」と同等に扱うこととした。すなわちLDL-C:100mg/dL以下を目標とするよう勧めている。本論文はそこまで高リスクでなくても,スタチンでLDL-Cをできるだけ下げることにより全死亡,心血管イベントの抑制効果があることを示している。本論文で対象としている患者はコレステロール135mg/dL以上で何らかのリスクのあるものとしていることから,リスクがある場合は,aspirinと同様に基礎薬としてすべての患者にスタチンを用いることでメリットがあるとしている。問題はコスト・ベネフィットである。コスト・ベネフィットの問題が解決されたら,確かにスタチンが基礎薬となる可能性はあるものと思われる(寺本民生・帝京大学)。
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検,多施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は5年。
対象患者 20536例。40〜80歳。心血管イベント高リスク例[心筋梗塞(MI)既往,他の血管疾患,閉塞性血管疾患,糖尿病,脳卒中,高血圧]。総コレステロール(TC)>135mg/dL。
患者背景:TC<194mg/dL 4072例,LDL-C<116mg/dL 33%,116〜135mg/dL 25%,>135mg/dL 42%。年齢>70歳 28%,女性25%。
治療法 次の4群にランダム化。simvastatin 40mg/日群,simvastatin 40mg+抗酸化ビタミン(ビタミンE 600mg,ビタミンC 250mg,β-カロチン20mg)群,抗酸化ビタミン群,プラセボ群。simvastatin群10269例,プラセボ群10267例;抗酸化ビタミン群2327例,プラセボ群2321例。
結果 全死亡率はsimvastatin群7.7%,プラセボ群9.2%とsimvastatin群で12%の有意なリスク低下が認められた(p<0.001)。同群のMI,脳卒中および関連血管死のリスク低下は17%であった(12.9% vs 14.6%,p<0.0002)。
脳卒中発症率は4.4% vs 6.0%とsimvastatin群で27%リスクが低下し(p<0.00001),脳梗塞は242例 vs 376例であった。主要な血管イベント(心疾患,脳卒中,血行再建術)の発生率は19.9% vs 25.4%とsimvastatin群で24%リスクが低下した(p<0.00001)。心疾患の既往のない糖尿病例ではMIあるいは脳卒中のリスクがsimvastatin群で28%低下。年齢,性,試験開始時のコレステロール値を問わず,simvastatin群でMI,脳卒中,有害事象のリスクが24%低下した。
全リスク低下は試験開始時のLDL-C値に関係なく認められた。開始時に<116mg/dLの例では25%のリスク低下,<100mg/dL(3500例)では24%低下した。
約2/3の症例で忍容性が認められ,スタチン関連の副作用はみられなかった。
抗酸化ビタミン群ではMIおよびその他の冠動脈死,あるいは全死亡のリスク低下はみられなかった。ビタミン治療に全死亡,全脳卒中,血行再建術抑制効果は認められなかった。
5年間のスタチン治療はMI既往1000例中100例,狭心症あるいは冠動脈心疾患1000例中80例,脳卒中既往1000例中70例,閉塞性血管疾患1000例中70例,糖尿病1000例で70例のMI,脳卒中,主要な血管イベントを抑制した。さらに狭心症悪化による入院は1000例中30例減少した。本効果はベースライン時のLDL-C,あるいはTC値を問わず認められた。世界で高リスク1000万人がスタチン治療を追加すれば死亡数が50000人/年減少する。本結果はすでに認められているaspirinのMI,脳卒中予防効果に匹敵するほど重要である。またスタチン治療はLDL-C値にかかわらず高リスク例で開始されるべきであることを示唆している。

「循環器トライアルデータベース®」
ライフサイエンス出版
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収録年月2001.11