E2F decoy
presenter: Eberhard Grube, MD(The Heart Center, Sieburg, Germany)

目的 冠動脈バイパス術例において,グラフト失敗および新生内膜増殖を抑制するための静脈グラフトへのintra-operative,ex-vivoでのE2Fデコイ(GT003)投与の安全性および実現性を検討する。
コメント E2Fデコイによって静脈グラフトの狭窄率が低下したことは興味深いが,1年後に75%以上の狭窄がプラセボ群の38.7%に生じているのは異常に高い。より手術手技の安定した施設での検討が必要である(永井良三・東京大学)。
デザイン 無作為割付け,プラセボ対照,二重盲検。
期間 追跡期間は12か月。
対象患者 200例。平均年齢68歳。2本以上の静脈グラフトを必要とする冠動脈疾患。
治療法 E2Fデコイ群(101例,172グラフト):E2Fデコイ転写因子を血管壁を伸展させない圧力で遺伝子導入する,プラセボ群(99例,137グラフト)にランダム化。
結果 死亡例はE2Fデコイ群6例,プラセボ群11例。うち心筋梗塞死は各4%,6%であった。
75%以上の狭窄の相対低下は30%(E2Fデコイ群27.3%,プラセボ群38.7%,p=0.3)であったが,<25mL/分の低血流のグラフトを除いた場合は18.3% vs 30.3%(p=0.03)で相対低下は40%であった。
主要有害冠イベント発生率はE2Fデコイ群12%,プラセボ群16%であった。インターベンション再施行率は各0%,1%,バイパスグラフト術再施行率はプラセボ群で3%であった。
E2Fデコイ遺伝子導入の毒性は低く有害イベントの発生率に群間差は認められず,安全であった。
冠動脈造影実施例はE2Fデコイ群で69例,プラセボ群で54例,IVUS実施例は各35例,30例であった。内膜面積はE2Fデコイ群78.6mm2,プラセボ群114.8mm2(p=0.024),内膜面積減少率は各12.5%,18.4%(p=0.05)であった。このことは動物モデルでみられるアテローム性動脈硬化の抑制と並行するグラフト壁の適応変化を反映している。
本試験はバイパスグラフト施行例における転写因子を阻害することによる遺伝子治療の最初のランダム化試験である。E2Fは安全で忍容性も良好である。E2Fデコイ導入に伴う外科的技術あるいは手技の変更は必要とされない。1年後の冠動脈造影上の静脈グラフト狭窄率は有意に低下し,IVUSによる血管壁面積も有意に減少した。本結果を受けて第3相の末梢血管および冠動脈試験が開始,予定されている。

「循環器トライアルデータベース®」
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収録年月2001.11