循環器トライアルデータベース学会情報 ACC2008 第57回米国心臓病学会 シカゴ

ACCOMPLISH

Avoiding Cardiovascular Events through Combination Therapy in Patients Living with Systolic Hypertension

高リスク高血圧患者において,ACE阻害薬+Ca拮抗薬の併用療法は,ACE阻害薬+利尿薬に比べて心血管イベントを20%抑制。

presenter: Kenneth A. Jamerson, MD ( University of Michigan Health System, US )

目的
高リスク高血圧患者を対象に,併用降圧療法の心血管イベント抑制効果を比較する(ACE阻害薬+Ca拮抗薬 vs ACE阻害薬+利尿薬)。
一次エンドポイントは心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,不安定狭心症による入院,血行再建術(PCI/CABG),突然死からの蘇生。

コメント
高リスク高血圧症例では,降圧目標値がより低くということが常識になり,併用療法,あるいは合剤の時代になってきている。本試験はACE阻害薬の併用薬としてCa拮抗薬を用いた方が降圧利尿薬よりも心血管合併症予防に優れるという仮説を証明するために行われた試験である。したがってACE阻害薬を中心に併用を組み立てた場合ということが前提である。

これまでのいくつかの臨床試験は,ACE阻害薬やARBなどのRA系抑制薬が心血管合併症を抑制しうるだけの降圧効果を発揮するためには,降圧利尿薬あるいは他の降圧薬の併用が必要であることを示してきた。ACE阻害薬ではPROGRESS試験がそうであるし,最近のVALUEやCASE-JではARB に降圧利尿薬を併用してCa拮抗薬に近い降圧効果を発揮することが示されている。したがってACE阻害薬とCa拮抗薬の併用の方が,ACE阻害薬と降圧利尿薬の併用よりも優れるという今回のACCOMPLISHの結果は予想された通りといえよう。降圧度の差がそのまま心血管イベント発症率の差になっているのも,臓器保護は厳格な降圧こそ重要という考え方を支持する結果といえる。

本試験の対象は,降圧薬治療(78%がACE阻害薬またはARB)を処方されているにもかかわらず収縮期血圧が160mmHg未満に下降しない症例が対象であることから,第一選択薬としてRA系抑制薬を用いた場合ということが前提となっている。実際には,単独で十分な降圧効果を発揮しうるCa拮抗薬を第一選択薬として用いる場合の方が効率とコストの面からも実際的である。副作用などの詳細は発表では明らかになっていないので,さらなるコメントは論文化されてから行いたい(桑島)。


デザイン
無作為割付け,多施設,intention-to-treat解析。

期間
追跡期間は平均39ヵ月。

対象患者
11462例。55歳以上;収縮期血圧(SBP)≧160mmHgまたは降圧治療中;心血管疾患/腎疾患/標的臓器障害既往。参加国は米国および北欧諸国(デンマーク,フィンランド,ノルウェー,スウェーデン)。

■患者背景:平均年齢(ACE阻害薬+Ca拮抗薬群68.4歳,ACE阻害薬+利尿薬群68.3歳),男性(60.1%,61.1%),白人(84.1%,83.4%),米国(70.7%,70.7%),北欧(29.3%,29.2%)。 肥満50%,糖尿病60%,降圧治療歴97%,LDL-C 101.6mg/dL,ベースライン時に2種類以上の降圧薬を投与していた例74%,<140/90mmHgにコントロールできていた例37.5%,ACE阻害薬/ARB投与例78%,脂質低下薬投与例67%,抗血小板薬投与例63%。


治療法
ACE阻害薬+Ca拮抗薬群(5721例):benazepril 20mg+amlodipine 5mgで治療を開始し,降圧目標(140/90mmHg,糖尿病または腎障害例では130/80mmHg)に達しない場合は1ヵ月後にbenazepril 40mg+amlodipine 5mgに増量→2ヵ月後にbenazepril 40mg+amlodipine 10mgに増量→3ヵ月目以降はβ遮断薬,α遮断薬,交感神経抑制薬clonidine,(ループ利尿薬)を任意追加。

ACE阻害薬+利尿薬群(5741例):benazepril 20mg+hydrochlorothiazide(HCTZ) 12.5mgで治療を開始し,降圧目標に達しない場合は1ヵ月後にbenazepril 40mg+HCTZ 12.5mgに増量→2ヵ月後にbenazepril 40mg+HCTZ 25mgに増量→3ヵ月目以降はβ遮断薬,α遮断薬,交感神経抑制薬clonidine,(ループ利尿薬)を任意追加。


結果
治療を完了したのはACE阻害薬+Ca拮抗薬群5713例,ACE阻害薬+利尿薬群5733例。 30ヵ月後に試験薬のみを用いていたものはそれぞれ51.0%,49.6%,1剤追加は16.5%,14.4%,2剤以上追加は15.0%,16.2%。

[降圧]
両群ともに20mmHg以上と良好に降圧した。30ヵ月後のSBPはACE阻害薬+Ca拮抗薬群129.3mmHg,ACE阻害薬+利尿薬群130mmHgで,その差(0.7mmHg)はわずかに有意となった(P<0.05)。
140/90mmHgを達成した人の割合は,ベースライン時にはACE阻害薬+Ca拮抗薬群37.9%,ACE阻害薬+利尿薬群37.2%で,30ヵ月後にはそれぞれ81.7%,78.5%だった(P<0.001)。

[心血管イベント]
一次エンドポイント:ACE阻害薬+Ca拮抗薬群(526件)では,ACE阻害薬+利尿薬群(650件)に比べて20%抑制された(相対リスク0.80,95%信頼区間0.72-0.90,P=0.0002)。
ACE阻害薬+Ca拮抗薬群のACE阻害薬+利尿薬群に対する各イベントの相対リスク(95%信頼区間)は,心血管死0.81(0.62-1.06),非致死的心筋梗塞0.81(0.63-1.05),非致死的脳卒中0.87(0.67-1.13),不安定狭心症による入院0.74(0.49-1.11),血行再建術0.85(0.74-0.99),突然死からの蘇生1.75(0.73-4.17)。

その他のエンドポイント:心血管死,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中は,ACE阻害薬+Ca拮抗薬群でACE阻害薬+利尿薬群に比べて20%抑制(P=0.007)。全死亡では有意差なし。

2007年10月17日,データ安全監視委員会により治験の終了が勧告された。実行委員会はこれを受け入れ,2008年1月24日をもって患者診察を終了した。