循環器トライアルデータベース学会情報 ACC2006 第55回米国心臓病学会 アトランタ

REACH Registry

Reduction of Atherothrombosis for Continued Health Registry

アテローム性血栓は,各血管床の疾患としてではなく“global disease”としての抑制努力が必要である。

presenter: Philippe Steg, MD(University of Paris, France)

目的
  • アテローム性血栓患者(ATD)およびATDハイリスク患者における主要有害心血管イベントのリアルワールドでのリスクを決定する。
  • ATDおよびサブグループの特徴および管理状態を検討する。
  • 世界規模およびサブグループにおけるアテローム性血栓イベントの長期リスクの検討。
  • 患者背景が異なるものの転帰を比較する。
  • アテローム性血栓イベントの予測因子を同定する。

コメント
日本を含む世界の心血管病に関する基礎データとなる発表である。心血管病に関する危険因子を持つものの約1年間の追跡調査であり,予後決定因子を見る上では重要な研究である。また,世界各地にわたる研究であることから地域ごとの危険因子も明らかにすることができると期待される(寺本)。

デザイン
観察登録研究,多施設(日本を含む44ヵ国5473施設)。

期間
追跡期間は当初12〜21ヵ月であったが,3〜4年に延長された。

対象患者
67,888例(日本の登録例5048例):45歳以上,次の4つのうち1つ以上を有するもの;脳血管疾患(CVD),脳卒中あるいは一過性脳虚血発作(TIA);冠動脈疾患(CAD);足首関節-上腕係数(ABI)<0.8の間欠性跛行の既往あるいは発症例;アテローム性血栓イベントの危険因子(年齢,喫煙例,糖尿病,高脂血症,糖尿病性腎症,高血圧,安静時ABI<0.9,無症候性頸動脈狭窄[>70%],1つ以上の頸動脈プラーク)を3つ以上有するもの。
今回の発表は1年間の追跡を終了した63,129例(92.3%)の結果。

■ 患者背景:平均年齢68歳,男性64%,糖尿病44%,高血圧82%,高脂血症72%,過体重(BMIが25〜29)40%,肥満(BMI≧30)30%,喫煙既往42%,現在の喫煙例15%。
症候性single arterial bed disease 66%,poly vascular disease 16%,マルチプルリスクファクター(MRF)18%,症候性疾患82%。治療状況:β遮断薬48.9%,ACE阻害薬48.2%,ARB 25.4%,抗血小板薬78.6%,aspirin 67.4%,脂質低下薬75.2%,スタチン69.4%。
参加者登録の際の医師:一般診療医37%,内科医33%,心臓医14%,脈管医(angiologist)1%,血管外科医2%,神経科医9%,内分泌医3%。
患者背景の詳細はJAMA. 2006; 295: 180-9. →文献情報

結果
  • 1年後の生存線によると,イベントは直線的に発症し間接的にではあるが登録者が安定した集団であることを示している。
  • 心血管死亡率は全体で1.5%,症候性疾患群で1.7%,MRF群で0.6%。
  • 非致死的心筋梗塞(MI)は全体で1.2%,症候性疾患群で1.2%,MRF群で0.8%,非致死的脳卒中はそれぞれ1.8 %,1.8%,0.8%。
  • 心血管死,MI,脳卒中は3.5%,3.9%,1.7%。
  • 心血管死,MI,脳卒中,アテローム性血栓イベントによる入院は12.9%,14.5%,5.4%。
  • 症候性疾患群では心血管死亡率が最も高かったのは末梢血管疾患(PAD)例。非致死的MI発症率はCAD例で最も高く,脳卒中はCVDで最も高かった。ただしこの3群は重なる部分があるので注意が必要である。CAD例のみでみると,血管床疾患の数が増えるに従いイベント発症率は上昇した。
  • poly vascular diseaseはsingle arterial bed diseaseに比べイベント率が2〜3倍増加した。PAD例のみでみると心血管死亡率は最も低く,PAD自体が予後不良に関連するわけではないことが示唆された。しかし,poly vascular diseaseのマーカーではある。
  • 心血管死亡率は症候性疾患を有する血管床の数の増加に伴い上昇した。
  • 不安定狭心症はCAD例で最も多く,TIAは脳卒中例で最多であった。PADの増悪およびその他の虚血性イベントはPAD例で最も多かった。慢性心不全はいずれの群でも発症し,症候性疾患例の約3%に発症した。出血は症候性疾患例の0.8%でみられた。
  • CAD例の5%で血管形成術あるいはステント,脳卒中例の1.1%で頸動脈ステントあるいは頸動脈術,PADの11%が手術,血管形成術,あるいは末梢血管ステント植え込み,下肢切断が必要であった。
  • 女性は男性に比べ年齢補正後の心血管死亡率が低く,非致死的MI,全体のイベント率もわずかに低かった。非致死的脳卒中は男女同様であった。
  • 80歳以上が死亡のリスクが明らかに高く,45〜60歳の若年層の比較的高いイベント率は発症前の疾患を反映しているものと思われる。