ACC2002

LIFE Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension

左室肥大を合併した本態性高血圧患者において,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)losartanはβ遮断薬atenololよりも,心血管疾患死および脳卒中の発生を抑制した。

presenter:Bjorn Dahlof, Sweden

目的 左室肥大(LVH)を合併した本態性高血圧患者において,心血管疾患死および合併症(脳卒中,心筋梗塞:MI)の発生抑制効果を,アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)losartanとβ遮断薬atenololとを比較。
コメント 左室肥大の合併は脳卒中頻度を増加させ,また退縮は脳心血管イベントの減少をもたらすとする成績を裏付ける結果である。losartanの一次エンドポイント予防効果はほとんど脳卒中予防効果によるもので,心筋梗塞予防効果はatenololと差がみられていない。言い換えればlosartanの心筋梗塞予防効果はatenololと同等であるが,脳卒中予防効果ははるかに優れているということである。両群の降圧効果はほぼ同等であることからlosartanの脳卒中予防効果は降圧効果以外の要因が関与していると考えられるが,losartan群ではatenolol群に比べて左室肥大の退縮効果が大きかったこと,糖尿病発症は少なかったことの2点がなんらかの関連で脳卒中予防効果をもたらしたと推定されるが,なお脳卒中の病型別の予防効果などサブ解析の結果が待たれる(桑島)。
デザイン 無作為割付け,多施設,intention-to-treat解析。
期間 追跡期間は一次エンドポイントの発生が1040例に達するまで,あるいは 4年以上。
対象患者 9,193例。平均年齢66歳(55〜80歳)。高血圧治療例および非治療例。収縮期血圧が160〜200mmHg,拡張期血圧が95〜115mmHg。心電図上でLVHが認められる例。
治療法 losartan群(4,605例):平均投与量82mg,atenolol群(4,588例):平均投与量79mgにランダム化。降圧が<140/90mmHgに達しない場合はhydrochlorothiazide(HCTZ)を漸増投与。
*試験終了時の投与状況:losartan群;HCTZ併用の有無を問わず投与量100mgが50%,50mgが9%,50mg+HCTZ併用例は18%,投与中止が23%。atenolol群;HCTZの併用の有無を問わず100mg投与が43%,50mg投与が10%,50mg+HCTZが20%,投与中止が27%。
結果   降圧効果は両群で同様であった(4.8年後の血圧:losartan群144/81.3mmHg,atenolol群145/80.9mmHg)。
一次エンドポイントの左室肥大およびFramingham risk scoreで補正後の発生リスクはatenolol群に比べlosartan群で13%低下した(p=0.021)(補正前は14.8%低下,p=0.009)。
losartan群ではatenolol群よりも心血管死亡のリスクが11.4%低下した(p=0.21)。同群における脳卒中の補正後のリスク低下は24.9%(p=0.001)。MI発症の補正後のリスク低下は7.3%(p=0.49)。
糖尿病新規発症のリスク低下は補正前後とも25%(p=0.001)。糖尿病サブグループにおいてlosartan群はatenolol群に比べ一次エンドポイントのリスクを24.5%低下(p=0.031),全死亡率は39%低下した(p=0.002)。
LVH退縮効果,忍容性は同群の方が良好で,有害事象による試験中止例は有意に少なかった。

降圧効果および退縮効果はlosartan群の一次エンドポイント抑制効果に部分的に寄与しているにすぎないと思われる。
atenololに比べlosartanは降圧効果を超えた良好な心血管死亡および合併症保護効果を示した。losartanの保護効果は糖尿病などの高リスク例,非血管低リスク例の双方で同様であった。losartanは新規糖尿病の発症をatenololより抑制し,忍容性も有意に良好であった。これらの結果は臨床に直接適応できるものである。
NHANES(National Health and Nutrition Examination Survey) IIIのデータに基づく公衆健康という観点からみると,米国では55歳超の心不全を有さないLVHを併発した高血圧例は390万人にのぼる。これらが4.8年間で本試験においてatenolol群に割付けられた例と同様のイベントが発生し,losaartanを使用したと仮定すると,7万例の心血管死亡/発生を予防し,脳卒中を6万例,5万例の糖尿病の新規発症を予防できることになる。

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収録年月2002.03