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[ AHA2011 LBCT II REVIEW ]  堀正二

LBCT II セッションは,薬剤や治療法の有効性を検証する臨床試験ではなく,医療受給者(患者)のパフォーマンスや医療の質を改善させるために,医療供給者に何ができるかを検証する試験を紹介するセッションであった。

MI FREEE試験
心筋梗塞後の二次予防薬剤費の負担を保険会社が全額負担することによりアドヒアランスが改善され,転帰の改善が認められたため,結果的に総医療支出が減少したという報告であるが,この結果を受けて本研究を支援した保険会社が患者の薬剤費負担を軽減する措置をとったとのことである。

HOOPS試験
心不全患者の服薬率を向上させるために薬剤師の服薬指導介入(30分)を行った試験であるが,若干の服薬率の向上は得られたものの転帰(心不全による入院)の改善は認められなかった。初回の単回介入のみでは効果が期待できず,頻回の継続介入の必要性が示唆された。

PRISM
治療法の選択(意思決定)に患者の同意(IC)を求めることは既に普及しているが,患者の病態に応じた説明をすることにより患者の意思決定への参加が促進されることが報告された。Web上の患者への説明プログラム(PRISM)を用いることにより,冠血管再建術(PCI)におけるステントの選択に患者自身の参加が増えたことから今後ICの個別化の方向が加速されるものと思われる。

CPORT E 試験
待機的PCIを心臓外科のない医療施設で実施しても死亡率に差がなかったことから,米国のガイドラインが見直されることになりそうである。

以上の試験は,いずれも医療現場での医療の質を向上させるための取り組みを評価・検証するものであるが,医療制度や医療経済,地域性などの影響をうけるため,そのままわが国に適用できるものではなく,わが国独自の取り組みも必要であることを示唆している。



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