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高リスク2型糖尿病 saxagliptin vs プラセボ 2.1年後のCVD:saxagliptin≒プラセボ
SAVOR-TIMI 53 
Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus-TIMI 53
CVD高リスクの2型糖尿病患者において,他の糖尿病治療薬へのDPP-4阻害薬サキサグリプチン(saxagliptin)追加のプラセボに対する2.1年後(中央値)の心血管イベントでの非劣性が認められる(第IV相試験)。
NEJM 2013. DOI: 10.1056/NEJMoa1307684
コメント DPP-4阻害薬は我が国では2010年のシタグリプチンを皮切りに現在7剤が上市されており経口糖尿病薬の中では売上高のトップを独走する。この薬剤は血糖上昇に応じたインスリン,グルカゴンの分泌調節をおこなうことにより血糖コントロールを改善するから,インスリン分泌促進薬との併用時以外は低血糖をおこす頻度が少なく,高齢糖尿病患者の第一選択薬とも考えられている。この薬剤でもう一つ,注目されてきたのは血管イベントに対する作用である。GLP-1の血管に対する好ましい作用,DPP-4の血管に対する好ましくない作用が基礎研究では集積されつつある。また血中GLP-1濃度を上昇させ,DPP-4活性を抑制することを介してDPP-4阻害薬がマウスおよびラットの実験で動脈硬化を抑制する,あるいは不安定プラークを安定化に導くといったデータも発表されている。さらに,多くのphase 3の試験結果をまとめたメタ解析(Monami M et al. Diabetes Obes Metab. 2013; 15: 112-20. PubMed)ではたった半年から1年の観察期間のうちに心筋梗塞や全死亡率が有意に抑制されたと報告されている。その意味でも今回の2つの発表は循環器医,糖尿病医に限らず,大きな注目を持って迎えられたであろう(コメント:弘世 貴久) →続きを読む
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,多施設。
一次エンドポイント 心血管死,非致死的MI,非致死的虚血性脳卒中の複合エンドポイント。
対 象  16,492例。
期 間 追跡期間は2.1年(中央値)。
治 療  saxagliptinの投与量は5mg/日,ただしeGFR≦50mL/分の場合は2.5mg/日。
結 果 高リスク2型糖尿病患者において,標準治療へのsaxagliptinの追加によるCVD抑制も増加も認められなかった。
saxagliptin群で心不全による入院が増加した →文献情報
Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus (SAVOR)-TIMI 53 Study
presenter: Deepak L Bhatt, MD ( Brigham and Women's Hospital, US )
noteFDAと欧州医薬品庁(EMA)は2008年に承認プロセスを改訂し,すべての新規血糖降下薬に対し心血管合併症に対する安全性を証明するよう勧告した。
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