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非心臓手術 aspirin群 vs プラセボ群 30日後の死亡+MI:aspirin群≒プラセボ群
POISE-2  
PeriOperative ISchemic Evaluation-2
非心臓手術施行例において,周術期のaspirin投与による死亡,心筋梗塞の有意な低下はみられず,重大な出血リスクが上昇した。
背景・目的 世界中で毎年2億人の成人が非心臓手術を受け,術後1,000万人が主要血管合併症(もっとも多いのは心筋梗塞[MI])を発症している。手術時に血小板は活性化することから周術期のMIには血栓が関与している可能性がある。周術期のaspirin使用に関しては,aspirinの投与歴のない患者と慢性投与している患者が混在している。
非心臓手術施行患者における抗血小板薬aspirinの有効性を検討する。

[一次エンドポイント]30日後の全死亡+非致死的MIの複合エンドポイント

コメント アスピリンも大変。
心臓以外の一般手術後に抗血栓薬を即座に使用する発想は,一般的な血栓リスクの低い日本では少ない。欧米を中心とする世界では,一般手術後の心筋梗塞に代表される血栓イベントの増加が問題視されている。手術をすれば,全身的に止血機転が働くので全身的な血栓性の亢進が起こる。アスピリンにより全身の血栓性の亢進に伴う心筋梗塞の発症を下げることができるか否かが本試験において検証された。アスピリンは抗血栓薬であるため出血リスクの増加は避け難い。本試験でもアスピリンによる出血の増加が確認された。術後30日の心筋梗塞の発症率はおよそ6%と高いが,トロポニン陽性にて定義される心筋梗塞の中には臨床家が避けたいと思う心筋梗塞以外も含まれる。重篤な出血は4%前後に起こり,アスピリン群にて高かった。安全性の確立したアスピリンであっても抗血栓効果よりも出血イベントリスクの方が大きい。極端に言えば,血栓イベントリスクの高かった世界も日本化して,血栓よりも出血の方が重要な時代になった。 (コメント:後藤信哉)。
デザイン ランダム化,プラセボ対照,二重盲検,clonidineとの2×2 factorial,多施設(23ヵ国135施設)。
対 象  10,010例。45歳以上の非心臓手術施行患者で血管合併症リスクの高い症例。
期 間 追跡期間は1年。
登録期間は2010年7月-’13年12月。
治 療  試験開始時にaspirinを投与していなかったStarting群(5,628例)とすでに投与していたContinuation群(4,382例)に層別してランダム化。
aspirin群(4,998例):200mgを手術直前に投与後,Starting群は100mgを30日投与,Continuation群は7日投与。
プラセボ群(5,012例)。
結 果 [一次エンドポイント]
aspirin群351例(7.0%)vs プラセボ群355例(7.1%):ハザード比0.99;95%信頼区間0.86-1.15(P=0.92)。

[その他]
二次エンドポイントである死亡+MI+脳卒中は7.2% vs 7.4%:0.98;0.85-1.13(P=0.80),死亡+MI+脳卒中+冠動脈血行再建術+静脈血栓塞栓症:8.0% vs 8.1%:0.99;0.86-1.14。
重大な出血は4.6% vs 3.7%:1.23;1.01-1.49(P=0.04)。
生命を脅かす,あるいは重大な出血は周術期MIの予測因子(1.82;1.40-2.36,P<0.001)。

presenter: P.J. Devereaux ( Population Health Research Institute, Canada )
→N Engl J Med. 2014 Mar 31. DOI: 10.1056/NEJMoa1401105
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