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スタチン不忍容の
高コレステロール血症
evolocumab群 vs ezetimibe群 12週後のLDL-C↓
evolocumab群>ezetimibe群*
GAUSS-2 
Goal Achievement after Utilizing an anti-PCSK9 antibody in Statin intolerant Subjects -2
2剤以上のスタチンに忍容できない高コレステロール血症患者において,抗PCSK9完全ヒト化モノクローナル抗体エボロクマブ(evolocumab)140 mg 1回/2週間または420 mg 1回/月皮下投与は,いずれもezetimibe経口投与にくらべ12週後のLDL-C値を有意に低下し,忍容性も良好であった(第III相試験)。
※抗PCSK9モノクローナル抗体
PCSK9はセリンプロテアーゼの一種で,肝臓で合成され血中に分泌される蛋白である。LDL受容体に結合し,LDL受容体の分解を促進する蛋白として知られており,PCSK9の機能獲得型変異をもった先天性疾患がまさに家族性高コレステロール血症と表現型が同一であることから発見された。evolocumabはこの蛋白に対するモノクローナル抗体製剤で,第II相試験においてLDL-Cの有意な低下と良好な安全性が示されている。
背景・目的 副作用によるスタチン不忍容は実地臨床で10-20%の患者に認められるとされている。スタチンのアドヒアランス不良は心血管疾患一次・二次予防での生存率に影響を及ぼす。
2剤以上のスタチンに忍容できない高コレステロール血症患者において,LDL-C低下効果を有する新規抗PCSK9完全ヒト化モノクローナル抗体エボロクマブ(evolocumab)皮下投与の有効性と安全性をezetimibeの経口投与と比較する。

[一次エンドポイント]LDL-Cのベースラインから10週後と12週後の平均値までの変化,および12週後までの変化。

コメント 本試験はLAPLACE-2と同様に,PCSK9に対するモノクロナール抗体を用いた臨床試験である。スタチン全盛の時代に,新たな治療薬であり,かつスタチンの弱点(スタチン治療によりPCSK9の合成が高まり,LDL受容体の分解を促進するためにスタチンの効果を減弱する)を補強するという意味で,スタチンとの併用でさらなるLDL-Cの低下を期待できる。lower the betterが正しいかという論議は別として,その方法が手に入るという利点は大きい。
LAPLACE-2で示されたLDL-Cは25mg/dLくらいにまで低下するようである。一方で,スタチンに忍容性のない患者を対象とした本試験では,LDL-C低下療法としては極めて有用な方法となる可能性が示された。これが,安全でさらなる心血管病予防につながるのか検討する大規模臨床試験が始まっているが,その結果を待ちたい (コメント:寺本民生)。
デザイン ランダム化,二重盲検,多施設。
対 象  307例。スタチン不忍容の高コレステロール血症患者。
■患者背景:年齢60-63歳,女性43-53%,白人90-96%,NCEPリスク分類(高:50-63%,中-高:10-16%,中:16-19%,低:6-16%),不忍容のスタチン数(≧3剤:51-67%,≧4剤:19-26%),おもな筋肉関連副作用(筋肉痛:78-88%,筋炎:8-22%,横紋筋融解症:0-4%),脂質低下治療29-36%,スタチン使用17-20%,LDL-C 192-195mg/dL,アポリポ蛋白B( ApoB)133-140mg/dL,りポ蛋白(a)(Lp(a))26-57nmol/L*,トリグリセライド139-170mg/dL*。*中央値
期 間 追跡期間は12週。
治 療  evolocumab 140mg 1回/2週皮下投与+プラセボ1回/日経口投与群(103例),
evolocumab 420mg 1回/月皮下投与+プラセボ1回/日経口投与群(102例),
プラセボ1回/2週皮下投与+ezetimibe 10mg 1回/日経口投与群(51例),
プラセボ1回/月+ezetimibe 10mg 1回/日経口投与群(51例)。
結 果 [一次エンドポイント]
・12週後のLDL-C値のベースラインからの低下
evolocumab 140mg 1回/2週+プラセボ1回/日群-56% vs プラセボ1回/2週+ezetimibe 10mg 1回/日群-18%;群間差-38%;P<0.001。
evolocumab 420mg 1回/月+プラセボ1回/日群-53% vs プラセボ1回/月+ezetimibe 10mg 1回/日群-15%;群間差-38%;P<0.001。
・10週後と12週後の平均LDL-C値のベースラインからの低下
evolocumab 140mg 1回/2週+プラセボ1回/日群 vs プラセボ1回/2週+ezetimibe 10mg 1回/日群:群間差-37%(P<0.001)。
evolocumab 420mg 1回/月+プラセボ1回/日群vs プラセボ1回/月+ezetimibe 10mg 1回/日群:群間差-39%(P<0.001)。

[安全性]
evolocumabの忍容性は良好で,筋肉症状も少なかった(筋肉痛:evolocumab群16例[8%] vs ezetimibe群18例[18%])。

[その他]
ApoB,Lp(a)の低下もevolocumab群がezetimibe群より有意に大きかった(P<0.001)。

presenter: Erik Stroes, MD ( Academic Medical Center, Netherlands )
→J Am Coll Cardiol. 2014 Mar 30. doi:10.1016/j.jacc.2014.03.019
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