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メタ解析
ACS患者におけるP2Y12阻害薬の有効性および安全性
Comparative Efficacy and Safety of Oral P2Y12 Inhibitors in Acute Coronary Syndrome: Network Meta-Analysis of 52,816 Patients From 12 Randomized Trials
結論 prasugrel,ticagrelorはclopidogrelにくらべ,虚血イベントを抑制したが,出血が増加した。死亡の有意な抑制がみられたのはticagrelorだけであった。prasugrelとticagrelorについて,有効性および安全性の差は認めなかった。
コメント クロピドグレルは非常に優れた薬剤である。特許が切れたので安価なジェネリック品もある。有効性,安全性,経済性において,クロピドグレルに勝る薬剤を開発することは困難である。プラスグレル,チカグレロルは急性冠症候群を中心にクロピドグレルに挑戦した。ランダム化比較試験の多くはプラスグレル,チカグレロルのメーカーがスポンサーをしている。見かけの上での有効性,安全性が安価なクロピドグレルに負けないように精一杯の注意をしている。巨大な投資を行う開発メーカーが精一杯の努力をした結果のメタ解析である。有効性が勝らなければ話にならないと考えれば,クロピドグレルの承認用量よりもP2Y12受容体を阻害する用量が選択される。その結果としては,重篤な出血イベントが増えてしまう。有効性がなんとか勝り,安全性は少し劣り,経済性に大きく劣る薬剤であることがメタ解析でも明確になってしまう。クロピドグレルの革新性,先進性があらためて明らかになった。(後藤信哉

目的 現行の急性冠症候群(ACS)に関するガイドラインでは,その有効性などからprasugrel,ticagrelorがclopidogrel より推奨されている。最近行われた試験では,prasugrel はticagrelorにくらべ,出血イベントを増加させずにすぐれた有効性を示した。本メタ解析では,ACS患者におけるP2Y12阻害薬の有効性および安全性を評価した。有効性主要評価項目:心血管死,全死亡,心筋梗塞,脳卒中,ステント血栓症(definite/probable),安全性主要評価項目:大出血。
方法 開設日から2019年10月19日まで,Cochrane Central Register of Controlled Trials,MEDLINE,EMBASE,TCTMD,ClinicalTrials.gov,Clinical Trial Results,主要学術集会プロシーディングを検索した。
対象:(1)ACS患者においてP2Y12阻害薬(prasugrel,ticagrelor,clopidogrel)を投与したランダム化比較試験,(2)臨床転帰を調査,(3)検討したい心血管臨床転帰を報告,(4)追跡期間30日以上。
除外:(1)同じP2Y12阻害薬の異なるレジメンを検討,(2)おもに血小板反応性を解析するためにデザインされた薬物動態/薬力学試験,(3)クロスオーバーデザイン,(4)ランダム化されていない試験。
対象 12試験(Elderly ACS II,ISAR-REACT 5,PHILOPLATO,POPular,PRAGUE-18PRASFIT-ACS,TICAKOREA,TRILOGY ACSTRITON-TIMI 38,Tang et al[PMID: 27010809],Wang et al[PMID: 27471389])
試験薬別:prasugrel対clopidogrel 4試験,ticagrelor対clopidogrel 6試験,prasugrel対ticagrelor 2試験。
52,816例。
主な結果 ticagrelorはclopidogrelにくらべ死亡を抑制した。ticagrelor,clopidogrel両剤とも概して,clopidogrelにくらべ虚血イベントを抑制したが,大出血に関しては両剤とも増加した。検討したすべての転帰について,prasugrelとticagrelorの間に有意差は認められなかった。
・心血管死
ticagrelor対clopidogrel:HR 0.82,95%CI 0.72-0.92。
prasugrel対clopidogrel:HR 0.90,95%CI 0.80-1.01。
prasugrel対ticagrelor:HR 1.10,95%CI 0.94-1.29,I2=10.1%。

・全死亡
ticagrelor対clopidogrel:HR 0.83,95%CI 0.75-0.92。
prasugrel対clopidogrel:HR 0.92,95%CI 0.84-1.02。
prasugrel対ticagrelor:HR 1.12,95%CI 0.98-1.28,I2=21.7%。

・心筋梗塞
ticagrelor対clopidogrel:HR 0.97,95%CI 0.78-1.22。
prasugrel対clopidogrel:HR 0.81,95%CI 0.67-0.98。
prasugrel対ticagrelor:HR 0.83,95%CI 0.64-1.07,I2=58.7%。

・ステント血栓症
ticagrelor対clopidogrel:HR 0.72,95%CI 0.58-0.90。
prasugrel対clopidogrel:HR 0.50,95%CI 0.38-0.64。
prasugrel対ticagrelor:HR 0.68,95%CI 0.50-0.93,I2=0%。

・脳卒中
ticagrelor対clopidogrel:HR 1.12,95%CI 0.90-1.40。
prasugrel対clopidogrel:HR 0.92,95%CI 0.74-1.15。
prasugrel対ticagrelor:HR 0.82,95%CI 0.62-1.10,I2=0%。

・大出血
ticagrelor対clopidogrel:HR 1.27,95%CI 1.04-1.55。
prasugrel対clopidogrel:HR 1.26,95%CI 1.01-1.56。
prasugrel対ticagrelor:HR 0.99,95%CI 0.79-1.24,I2=35.3%。
文献: Navarese EP, et al. Comparative Efficacy and Safety of Oral P2Y12 Inhibitors in Acute Coronary Syndrome: Network Meta-Analysis of 52,816 Patients from 12 Randomized Trials. Circulation 2020; 142: 150-60. pubmed
関連トライアル GEMINI-ACS-1, GRAPE Registry, P2Y12阻害薬の性差, PLATO patients with NSTE-ACS, PRAGUE-18, PRAGUE-18 one year outcomes, TRITON-TIMI 38 discharge aspirin dose
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