抗血栓トライアルデータベース
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SAKURA AF Registry
結論 異なる背景をもつ心房細動(AF)患者において,under-dose群の臨床転帰は適正標準用量群にくらべ,不良ではなかった。しかし,over-dose群ではすべての臨床イベントリスクが高く,慎重なフォローアップが必要である。わが国における直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)のオフラベル使用の安全性,有効性を明確にするためには,更なる試験が求められる。
コメント 日常診療で,高齢者にunder-doseを使用することはまれではない。その際気になるのは,虚血イベントが増えないか,大出血は抑制できているのかという点である。結論として,under-dose群では標準用量群に比し,背景因子を調整しても悪くないということで,1つの安心材料になるであろう。ただ,これが平均71歳のAF患者すべてに当てはまるとは考えてほしくない。むしろ,本研究に参加された医師は個々の患者の背景を考えながら症例を選択し,under-doseを使用した結果ともいえる。また,under-dose投与例の75%がダビガトランあるいはリバーロキサバンであり,標準用量と低用量の差が大きいアピキサバン,エドキサバンは25%であることも,今回の結果に影響を与えた可能性がある。(是恒之宏

目的 わが国のAF患者の臨床において,特に高齢,低体重,腎機能障害のある患者に対しては,標準用量投与基準に合致しているのに低用量のDOACが投与されることがある(under-dose)。あるいは,低用量投与基準に合致しているにもかかわらず,標準用量が投与される場合もある(over-dose)。本解析では,日本人AF患者におけるDOACのオフラベル使用の臨床的意義を検討した。主要評価項目:脳卒中(脳梗塞,出血性脳卒中,一過性脳虚血発作),または全身性塞栓症(SE)。安全性評価項目:大出血。
デザイン 前向き観察研究。UMIN000014420。
セッティング 多施設(63施設),日本。
期間 登録期間は2013年9月~2015年12月。追跡期間中央値39.3ヵ月。
対象患者 3,268例。心電図にもとづいた非弁膜症性AFの診断をうけている,≧20歳,脳卒中予防のために何らかの抗凝固薬を投与されている患者(投与を開始したばかりの患者も含む)。
【除外基準】-
【患者背景】平均年齢*1はover-dose群76.0歳,適正標準用量群66.9歳,適正低用量群79.2歳,under-dose群71.2歳。それぞれの女性*130.3%,21.6%,38.8%,29.0%。AFの病型:発作性*140.9%,44.2%,36.9%,45.3%。平均CHA2DS2-VAScスコア*2 3.24,2.42,3.69,2.88。平均HAS-BLED出血リスクスコア*21.52,1.16,1.46,1.25。
*1p<0.001,*2p<0.0001
治療法 warfarin投与は1,561例,DOAC投与は1,658例(DOAC禁忌例,投与量不明例を除く)。
適正標準用量投与746例(45.0%),適正低用量投与477例(28.7%),over-dose 66例(4.0%),under-dose 369例(22.2%)であった。
それぞれのDOACの内訳は以下の通り。適正標準用量投与:dabigatran 11.8%,rivaroxaban 54.4%,apixaban 33.0%,edoxaban 0.8%,適正低用量投与:それぞれ49.1%,28.9%,19.3%,2.7%,over-dose:53.0%,37.9%,6.1%,3.0%,under-dose:24.9%,50.1%,22.2%,2.7%。
追跡完了率 追跡完了は1年後3,157例(97.5%),2年後2,952例(91.2%)。
結果

●評価項目
適正標準用量群にくらべ,over-dose群ならびにunder-dose群は高齢で,脳卒中リスクが高かった。
多変量調整後,under-dose群は適正標準用量群にくらべ,脳卒中/SEおよび死亡は同程度であったが,大出血は少ない傾向がみられた。
脳卒中/SE:HR 0.851,95%CI 0.391-1.746,p=0.6675。
大出血:HR 0.474,95%CI 0.185-1.071,p=0.0739。
死亡:HR 1.782,95%CI 0.810-3.925,p=0.1493。
複合イベント(脳卒中/SE+大出血+死亡):HR 1.058,95%CI 0.643-1.710,p=0.8220。
over-dose群は適正標準用量群にくらべ,複合イベントが多かった。
脳卒中/SE:HR 2.249,95%CI 0.694-6.117,p=0.1650。
大出血:HR 2.367,95%CI 0.695-6.555,p=0.1554。
死亡:HR 2.230,95%CI 0.591-7.155,p=0.2239。
複合イベント:HR 2.714,95%CI 1.313-5.269,p=0.0081。

●有害事象

文献: Murata N, et al.; SAKURA AF Registry Investigators. Clinical Outcomes of Off-Label Dosing of Direct Oral Anticoagulant Therapy Among Japanese Patients With Atrial Fibrillation Identified From the SAKURA AF Registry. Circ J 2019; 83: 727-735. pubmed
関連トライアル ENGAGE AF-TIMI 48 dose and outcomes, ENGAGE AF-TIMI 48 valvular heart disease, Fushimi AF Registry DOAC use, Fushimi AF Registry type of AF, Larsen TB et al, Lopes RD et al, NOACのwarfarinに比較しての死亡率抑制効果, NVAF患者における周術期転帰:DOACとwarfarinの比較, ORBIT-AF bridging, ROCKET AF elderly patients, ROCKET AF temporary interruption, Swedish Atrial Fibrillation cohort study, 新規経口抗凝固薬4剤のwarfarinに対する有効性・安全性
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