Lamberts M et al | Antiplatelet Therapy for Stable Coronary Artery Disease in Atrial Fibrillation Patients on Oral Anticoagulant: a Nationwide Cohort Study |
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●結論 | 心房細動合併安定冠動脈疾患患者において,ビタミンK拮抗薬(VKA)への抗血小板薬の追加は冠動脈イベント再発を抑制せず,出血リスクが有意に上昇した。 |
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●コメント | 新規経口抗凝固薬の登場後,心房細動症例の抗凝固療法が注目されている。従来の経緯から,冠動脈疾患症例には抗血小板薬アスピリンによる心筋梗塞予防も普遍化している。冠動脈疾患を合併した心房細動では,「冠動脈疾患に対するアスピリン」と「心房細動に対する抗凝固薬」の併用が論理的である。一方,アスピリン,ワルファリンはおのおの単独でも出血イベントリスクが増加するので,抗血栓併用療法は好ましくないかもしれない。どちらか一方のみを選択したほうが効率的かもしれない。本研究は介入研究ではない。症例数は8,700例と多く,観察期間も3.3年と長いが,観察研究としての欠点を乗り越えることはできない。 対象症例は心筋梗塞またはPCIのため入院した心房細動症例のうち,抗血栓薬を処方された症例である。「入院した症例」という点でも一般の実地医家の診ている症例群とは背景が同一ではない。これらの症例の年間イベント発症率は,日本の一般医療の常識と比較すると高い。心筋梗塞/冠動脈死亡が年間7.2%,血栓塞栓症は3.8%,重篤な出血イベントは年間4%に発症した。いずれも,日本の一般的な医療の常識からはかけ離れて高い。この一般的な数値を前提とすれば,抗凝固薬による血栓塞栓イベント予防よりもアスピリンによる心筋梗塞/心血管死亡を重視すべきと考える。しかし,本研究では抗凝固薬を標準として,抗血小板薬追加時には効果がないと結論している。論文の結論は「心房細動を合併した安定した冠動脈疾患では,ビタミンK阻害薬(ワルファリン)に抗血小板薬を追加しても冠動脈イベント,血栓塞栓イベントともに減少せず,出血が増加する」であるが,アスピリン単剤であれば重篤な出血イベントは少ない。Table 2をみると,実態医療から至適の抗血栓療法を選択することの困難性が理解できる。(後藤信哉) |
●目的 | 心房細動を合併している安定冠動脈疾患患者に対する至適長期抗血栓療法については未解決であり,通常は経口抗凝固療法に抗血小板薬単剤が追加される。本試験ではデンマークの全国規模のデータを用い,心房細動合併安定冠動脈疾患患者において,VKA単独はVKA+抗血小板薬併用にくらべ,冠動脈イベントまたは血栓塞栓症リスクを上昇させずに出血イベントを抑制するという仮説を検討した。主要評価項目:心筋梗塞,冠動脈死,致死的/非致死的血栓塞栓症。 |
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●デザイン | コホート研究。 |
●セッティング | 多施設,デンマーク。 |
●期間 | 対象入院期間は2001年1月1日~2011年12月31日。追跡期間は3.3年。 |
●対象患者 | 8,700例。心筋梗塞またはPCI施行のため入院した心房細動患者全例のうち,抗血栓薬を処方された症例。 【除外基準】当該イベント前の360日間に心筋梗塞発症またはPCI施行,その360日後までに心筋梗塞もしくは不安定/安定狭心症のため入院。 【患者背景】処方薬別の平均年齢は,aspirin単独群76.1歳,clopidogrel単独群73.4歳,aspirin+clopidogrel併用群73.0歳,VKA単独群73.2歳,VKA+aspirin併用群73.6歳,VKA+clopidogrel併用群72.6歳,VKA+aspirin+clopidogrel併用群71.0歳。各群の男性46%,39%,37%,38%,31%,30%,20%。CHA2DS2-VAScスコア0/1/≧2点1%/4%/95%,2%/8%/89%,2%/7%/92%,1%/4%/95%,1%/4%/95%,0%/6%/94%,1%/8%/91%。 |
●治療法 | 処方によりaspirin単独群(3,273例),clopidogrel単独群(417例),aspirin+clopidogrel併用群(1,767例),VKA単独群(950例),VKA+aspirin併用群(1,471例),VKA+clopidogrel併用群(322例),VKA+aspirin+clopidogrel併用群(500例)に分けて解析を行った。 |
●追跡完了率 | 100%。 |
●結果 | ●評価項目 ●有害事象 |
文献: Lamberts M, et al. Antiplatelet Therapy for Stable Coronary Artery Disease in Atrial Fibrillation Patients on Oral Anticoagulant: A Nationwide Cohort Study. Circulation 2014; 129: 1577-85. pubmed | |
●関連トライアル | ACS後の患者における新規経口抗凝固薬の追加効果, ACTIVE A, ACTIVE W, ACTIVE W paroxysmal vs sustained, BAT, Lamberts M et al, Lamberts M et al, Sørensen R et al, Swedish Atrial Fibrillation cohort study |
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