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TRIM Thrombin Inhibition in Myocardial Ischaemia
結論 不安定冠動脈疾患患者において,投与中のイベント発生率はheparin群で低く,inogatranのいずれの投与量においても虚血性イベント抑制効果はheparinのほうが優れていた。また,inogatran投与量とイベント発生率に関連性は認められず,またinogatranによる活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)延長は明らかであるが,高用量による改善はみられなかった。さらに,heparinまたはinogatran投与中止後にイベント発生率の増加が認められた。

目的 不安定冠動脈疾患[不安定狭心症または非Q波心筋梗塞(MI)]患者において,3用量の選択的抗トロンビン薬(低分子量inogatran)と抗凝固薬heparinの有効性を比較検討。
一次エンドポイント:7日後の死亡+MI(再梗塞)+治療抵抗性狭心症+狭心症再発の複合。二次エンドポイント:3および30日後の一次エンドポイント,3,7,30日後の死亡+MIの複合,または死亡+MI+治療抵抗性狭心症の複合。
デザイン ランダム化,二重盲検,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(4ヵ国,61施設)。
スカンジナビア諸国:デンマーク,フィンランド,ノルウェー,スウェーデン。
期間 追跡期間は30~40日。登録期間は1994年12月~1995年7月。
対象患者 1,209例(うち,不安定狭心症736例,非Q波梗塞428例)。平均年齢64歳。新たな虚血性胸痛または過去の安定労作性狭心症の急速な増悪による不安定狭心症,または非Q波MIと推測される症例:心電図異常(隣接する2つ以上の誘導で≧0.1mVのST下降またはT波陰転),またはMI既往,冠動脈造影・心筋灌流シンチグラフィ・運動負荷試験で陽性。
【除外基準】出血に高リスク(特に大動脈瘤),コントロール不能な高血圧症,脳卒中既往,過去2年以内の胃潰瘍,泌尿生殖器出血,3ヵ月以内の重篤な外傷,スクリーニング前1週間以内の経口抗凝固薬・ heparin・線溶薬投与歴,MI発症徴候による血栓溶解療法の必要性,代償不全のうっ血性心不全,重篤な不整脈,冠動脈疾患によらない心筋虚血,過去3ヵ月以内のPTCAまたはCABG施行歴,血清クレアチニン値>150μmol/L,貧血(Hb値<100g/Lまたは6.21mmol/L),肝疾患,heparinに忍容性のない,薬物依存症,アルコール中毒など。
治療法 次の4群にランダム化。
heparin投与群(305例),低用量inogatran投与群(302例:LDI群,1.10mgボーラス投与後,2.0mg/時を72時間静注),中等量inogatran投与群(303例:MDI群,2.75mgボーラス投与後,5.0mg/時を72時間静注),高用量inogatran投与群(299例:HDI群,5.50mgボーラス投与後,10.0mg/時を72時間静注)。胸痛の鎮痛から24時間以内に投与開始。inogatran群:目標血漿濃度をLDI群0.15μmol/L,MDI群0.40μmol/L,HDI群0.80μmol/Lとした。
heparin群:5,000Uボーラス投与後,1,200U/時を72時間継続静注。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を投与開始前,6,24,48時間後に評価。aPTTが24~35秒未満となった場合は投与量を減量補正(増量は実施せず)。全例にaspirin投与を推奨。ticlopidineおよび経口抗凝固薬の投与は不許可。他剤の投与は担当医の裁量に任せた。
追跡完了率 プロトコール遵守率は88%。
【脱落理由】表記なし。
結果

●評価項目
静注終了時,全例の94.6%にaspirin(平均投与量101±59mg)投与(4群間で同等)。24時間後のaPTT(中央値)はheparin群54秒,LDI群36秒,MDI群44秒,HDI群53秒と有意差はなく,48時間後も同等であった。48時間後の血漿inogatran濃度は,LDI群0.20μmol/L,MDI群0.52μmol/L,HDI群1.00μmol/Lと予想を上回った。
静注終了時(3日後)のイベント(死亡+MI+治療抵抗性狭心症+狭心症再発)発生率は,heparin群29.5%(90例),inogatran投与群37.7%(341例)とheparin群で有意に抑制され(オッズ比1.48,95%CI 1.12-1.96),inogatran投与量によるイベント発生率に差はみられなかった(LDI群39.4%,MDI群37.6%,HDI群36.1%)。3日後の死亡+MIがheparin群でinogatran投与群に比し有意に抑制されたことから(0.7% vs 3.2%,オッズ比5.02,1.19-21.17,p=0.01),3日後の死亡+MI+治療抵抗性狭心症はheparin群2.6%, inogatran群5.4%とheparin群で顕著に減少した(2.17,1.02-4.64,p=0.06)。
一次エンドポイント発生率は,heparin群41.0%,inogatran投与群45.7%(LDI群45.7%,MDI群45.9%,HDI群45.5%)とheparin群で抑制傾向がみられたものの,有意差には至らなかった(オッズ比1.23,95%CI 0.95-1.61)。また,30日後の一次エンドポイント発生率は4群間に差は認められなかった(heparin群47.9%,LDI群51.7%,MDI群52.2%,HDI群53.2%:inogatran投与群52.3%,オッズ比1.21,95%CI 0.93-1.57)。
死亡およびMIは投与終了後に増加がみられたが,LDI群では認められなかった。

●有害事象
7日後の重篤な出血の発生率は1.1%(13例),軽度の出血は8.0%(97例)であったが,4群間に差は認められなかった。また,頭蓋内出血の発生はなし。

文献: [main] Thrombin inhibition in Myocardial Ischaemia (TRIM) study group. A low molecular weight, selective thrombin inhibitor, inogatran, vs heparin, in unstable coronary artery disease in 1209 patients: A double-blind, randomized, dose-finding study. Eur Heart J 1997; 18: 1416-25. pubmed
関連トライアル ATACS, ATACS-pilot, Cohen M et al, ESSENCE 1997, ESSENCE 1998, ESSENCE 2000, FRAMI, FRAX.I.S, FRIC, FRISC, FRISC II 1999, Gurfinkel EP et al, GUSTO IIb 1996, HAS, HELVETICA, HIT-III, Holdright D et al, MINT, Neri Serneri GG et al, OASIS Pilot Study 1997, OASIS Pilot Study 1998, OASIS-2, PARAGON-A, PRISM, PRISM-PLUS 1999, RISC 1990, RISC 1991, Spanish Multicenter Trial, SYMPHONY, TAUSA, Théroux P et al 1988, Théroux P et al 1992, TIMI 11A, TIMI 11B, TIMI 7, TIMI 9A, TIMI 9B, TIMI IIIB 1994, TIMI IIIB 1999 Database Study, TRIC
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