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Mayo Asymptomatic Carotid Endarterectomy Study
結論 頸動脈内膜切除術を施行予定の無症候性の頸動脈狭窄患者に対して,周術期および施行後のaspirin投与は,禁忌でない限り適正に行うことが強く推奨される。

目的 無症候性の頸動脈狭窄患者において,頸動脈内膜切除術と抗血小板薬aspirin(低用量)の有効性を比較検討。
一次エンドポイント:一過性脳虚血発作(TIA),全血管部位での脳梗塞または脳内出血および死亡。二次エンドポイント:心筋梗塞(MI),症候性冠動脈疾患(CAD)によるCABG施行の必要性。
デザイン ランダム化,非ランダム化,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設。アメリカ。
期間 追跡期間は平均23.6ヵ月。登録期間は30ヵ月。1990年12月追跡終了。
対象患者 158例(ランダム化群71例,非ランダム化群87例)。以下の条件をすべて満たす症例:1)脳または網膜虚血疾患の既往歴なし,2)局所性の頸動脈雑音を有する,または有さない症例,3)接眼肺脈波(ocular pneumoplethysmography)で認められる内頸動脈(一側あるいは両側)病変を有し,duplex超音波検査または静脈のdigital subtraction angiogram(DSA)所見において閉塞がなく,かつ≧50%の縦断面での狭窄または75%の横断面での狭窄を有する症例。
【除外基準】年齢18歳未満または80歳以上,妊娠可能な年齢の女性,aspirinへの禁忌,造影剤へのアレルギー歴,過去6ヵ月以内の不安定狭心症またはMI既往,心原性塞栓症の可能性(心房細動,心房粗動,完全房室ブロック,重篤な弁膜症:人工心臓弁を含む),中等度~重度のうっ血性心不全,重篤な閉塞性肺疾患,頸動脈解離,線維筋性異形成などの非アテローム性の頸動脈狭窄,脳梗塞発症に関連する血液学的または全身性疾患,腎不全(血清クレアチニン濃度>2mg/dL),コントロール不能な高血圧症または糖尿病。両側の動脈内膜切除術とCABGの同時施行,または頸動脈内膜切除術とCABGの同時施行を要する症例。
治療法 ランダム化群の71例を頸動脈内膜切除術施行群(36例)とaspirin投与群(35例)にランダム化(dynamic randomization scheme:年齢,性別,高血圧症の既往歴,CAD既往歴,過去1年以内の喫煙歴をバランス因子として使用)。非ランダム化群87例では,32例で切除術施行,55例でaspirin投与。非ランダム化群における施行率は男性で高かった(46% vs 19%)。
頸動脈内膜切除術施行群:頸動脈造影と頸動脈内膜切除術(一側または両側の判断は医師の裁量に任せた)を施行。施行群へのaspirin投与は他の疾患への適応がある場合にのみ許可。
aspirin群:80mg/日を経口投与し,その他の追加投与,他の抗血小板薬(非ステロイド性抗炎症薬を含む)の投与は避けた。両群に他の脳血管疾患リスク因子の治療(高血圧症,高脂血症,糖尿病を含む)を実施。
追跡完了率 全例でプロトコール完了(100%)。
結果

●評価項目
(本試験は1990年6月までの登録患者において,aspirin群に比し施行群でMIおよびTIA発症が有意に多かったため,1990年12月に早期中止。)
ランダム化群:局所性脳虚血イベントはaspirin群4例(全例がTIA),施行群4例(脳梗塞3例,TIAが1例)。両群において,局所性脳虚血イベント(p=0.974)または脳梗塞(p=0.0866)発症に有意差なし。MIは施行群のみに8例認められ(全例が非致死性:心内膜下5例,貫壁性2例,不明1例)とaspirin群で有意に抑制された(p=0.0037)。施行群3例,aspirin群1例でPTCAまたはCABGを施行。一次および二次エンドポイントはaspirin群で施行群に比し有意に抑制された(p=0.0363)。
非ランダム化群:局所性脳虚血イベントはaspirin群3例(脳梗塞1例,TIAが2例),施行群6例(脳梗塞2例,TIAが4例)。MIは各群1例に発症。一次エンドポイント,MIのいずれかまたは両者の発症は,aspirin群で有意に近い抑制が認められた(p=0.0412)。
全158例における解析では,一次エンドポイントまたはMIはaspirin群8例,施行群18例とaspirin群で有意に抑制され(p=0.0023),エンドポイント到達例のうち18例はイベント発生時にaspirin投与を受けておらず(aspirin群2例,施行群16例, p=0.0011),warfarinまたはaspirin以外の抗血小板薬の投与は両群で同等であった。
周術期の脳卒中発症率は,ランダム化群4%,非ランダム化群3%であり,同側性の脳卒中発症率は各群0%,3%。重篤で障害を伴う脳卒中または死亡は両群ともに0%であった。イベントの多くは切除術施行と関連なく発生したが,施行群におけるaspirin非投与とこれらのイベント発生との関連性が認められた。一方,本試験では両治療の有効性を比較するに十分なイベント数は得られなかった。

●有害事象
ランダム化群の施行群において,軽度の脳神経障害が3例(11%)発症。創傷による血腫または感染症,うっ血性心不全,肺炎,その他の合併症は両群において認められなかった。

文献: Mayo Asymptomatic Carotid Endarterectomy Study Group. Results of a randomized controlled trial of carotid endarterectomy for asymptomatic carotid stenosis. Mayo Clin Proc 1992; 67: 513-8. pubmed
関連トライアル ACE, NASCET 1998
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