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Post CABG Post Coronary Artery Bypass Graft Trial
結論 積極的なLDL-C値低下療法(目標値<100mg/dL)により,グラフトにおけるアテローム性動脈硬化症の進行が抑制されることが示されたが,低用量warfarinによる効果は認められなかった。

目的 伏在静脈を用いたCABG施行例において,積極的な低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)低下療法と低用量抗凝固薬warfarin(INR<2)による,アテローム性動脈硬化症の進行およびグラフト閉塞の抑制効果を検討。
一次エンドポイント:登録時の開存グラフトにおける,1症例あたりのアテローム性動脈硬化症(内腔径の減少≧0.6mm)発生。
デザイン ランダム化,プラセボ対照(warfarin群),2×2 factorial,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(7施設)。アメリカ。
期間 追跡期間は平均4.3年。登録期間は1989年3月~1991年8月。
対象患者 1,351例。21~74歳(平均61.5歳)。男性92%,白人94%。LDL-C値≦200mg/dL,登録時より過去1~11年の間に2つ以上の伏在静脈を用いたCABG施行例のうち,以下の条件を満たす症例:食事療法後のLDL-C値130~175mg/dL(4.5mmol/L),およびトリグリセリド値<300mg/dL(3.4mmol/L),開存する2つのグラフト(狭窄率<75%)を有する男性または同グラフトを1つ有する女性,駆出率(EF)≧30%。
【除外基準】5年以内の血行再建術再施行または死亡の可能性,過去6ヵ月以内の不安定狭心症または心筋梗塞(MI)既往,重篤な狭心症,心不全,試験薬への禁忌。
治療法 積極的LDL-C低下療法(積極的治療)+warfarin投与群(337例),積極的治療+プラセボ群(339例),通常LDL-C低下療法(通常治療)+warfarin投与群(337例),通常治療+プラセボ群(338例)にランダム化。
積極的治療:LDL-C目標値60~85mg/dL(1.6~2.2mmol/L)。lovastatin 40mg/日投与。LDL-C目標値<85mg/dL達成に必要な場合は倍量の投与を推奨し,<60mg/dLまで低下した場合は減量。連続した2回の測定でLDL-C値>95mg/dL(2.5mmol/L)の場合にはcholestyramine 8g/日を投与し,cholestyramine投与例ではlovastatin 80mg/日を継続投与。
通常治療:LDL-C目標値130~140mg/dL(3.4~3.6mmol/L)。lovastatin 2.5mg/日投与。LDL-C目標値<140mg/dL達成に必要な場合は倍量投与を推奨し,<130mg/dLまで低下した場合は減量。連続した2回の測定でLDL-C値>160mg/dL(4.1mmol/L)の場合にはcholestyramine 8g/日を投与し,cholestyramine投与例ではlovastatin 5mg/日を継続投与。
登録時にwarfarinまたはプラセボを1mg投与。LDL-C低下療法が安定した後,INR≧2.0でない限り,次の検診の2週間前より1mgずつ増量(最大投与量4mg/日)。INR≧2.0の場合は投与量を1mgずつ減量。全例にaspirin 81mg/日投与を推奨。
血管造影はベースライン時およびフォローアップ時(4~5年後)に施行。15ヵ月後までは6週間ごと,その後は3ヵ月ごとに評価を実施。
追跡完了率 臨床上の追跡完了率は98%。
【脱落理由】表記なし。
結果

●評価項目
登録から1年後の追跡時におけるlovastatin投与量は,積極的治療群76±12.6mg/日,通常治療群4±1.25mg,cholestyramine 8g/日投与実施例は各群30%,5%。年次測定のLDL-C平均値は,積極的治療群93~97mg/dL,通常治療群132~136mg/dLであり(p<0.001),両群間の差は平均38~43mg/dL(1.0~1.1mmol/L)であった。LDL-C値の平均減少率(ベースライン時-年次測定値)は積極的治療群37~40%,通常治療群13~15%。warfarin投与の有無によるLDL-C値への有意な影響は両群において認められなかった。全例の93%にaspirin投与(86%は81mg/日投与)。平均INR値はwarfarin群1.4,プラセボ群1.05(p<0.001)。
LDL-C低下療法とwarfarin投与に有意な交互作用が認められなかったことから(p>0.05),統合したデータで解析(積極的治療群676例 vs 通常治療群675例,warfarin群674例 vs プラセボ群677例)。
一次解析は1,192例(88.2%)で実施。一次エンドポイント+死亡の発生率は,積極的治療群27%,通常治療群39%と積極的治療群で有意に抑制され(p<0.001),warfarin群とプラセボ群では差は認められなかった(34% vs 32%,p=0.48)。1症例あたりの平均閉塞率は積極的治療群で有意に低く(6% vs 11%,p<0.001),新たな病変の発生率も同様であった(10% vs 21%,p<0.001)。全グラフトの解析においても,積極的治療群で閉塞および新規の病変発生の有意な抑制が認められた(p<0.001)。内径の狭小化は積極的治療群で通常治療群に比し有意に抑制された(最小値:-0.197 vs -0.379,平均値:-0.165 vs -0.342,ともにp<0.001)。
プロトコールで予定した血管造影施行前の死亡は64例(3例は入院中の血管造影後に死亡),うち63%は心血管死であった。臨床イベントの複合(全死亡+非致死性MI+脳卒中+バイパス手術+血管形成術)発生率は,積極的治療群12.6% vs 通常治療群15.3%(p=0.12),warfarin群13.2% vs プラセボ群14.8%(p=0.40)と有意差はなく,各エンドポイントにおいても差は認められなかった。積極的治療群で通常治療群に比し血行再建術再施行率が29%抑制されたが,有意ではなかった(6.5% vs 9.2%,p=0.03)。

●有害事象
有害事象の疑いによるlovastatin投与中止は,積極的治療群3%,通常治療群2%(投与量の減量は各群ともに5%)。warfarinまたはプラセボの投与中止は9%とlovastatin投与群(2%)より多くみられた。lovastatinの忍容性は良好で85~90%が処方通りの投薬を受けたが,cholestyramineへの忍容性は65%と低かった。また,warfarin投与による患者のコンプライアンスは80%,プラセボ群では85%であった。アミノトランスフェラーゼ値の上昇(>正常上限値の2倍)は積極的治療群3%,通常治療群2.5%,クレアチンキナーゼ値の上昇(>正常上限値の3倍)は5例(うち4例は積極的治療群)で認められた。横紋筋融解症の発症はなし。出血および/または輸血の必要性による入院はwarfarin群,プラセボ群でそれぞれ3%。

文献: [main] The Post Coronary Artery Bypass Graft Trial Investigators. The effect of aggressive lowering of low-density lipoprotein cholesterol levels and low-dose anticoagulation on obstructive changes in saphenous-vein coronary-artery bypass grafts. N Engl J Med 1997; 336: 153-62. pubmed
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