抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
Cohen M et al Combination therapy with tirofiban and enoxaparin in acute coronary syndromes
結論 急性冠症候群(ACS)患者において,tirofiban+enoxaparin併用はtirofiban+未分画heparin併用に比較して,血小板凝集阻害作用がより安定し,かつ補正後の出血時間延長が有意に短縮されたことから,tirofiban+enoxaparin(低分子量heparin)併用は有望であることが示された。

目的 急性冠症候群(ACS)患者において,血小板GP IIb/IIIa受容体拮抗薬tirofiban併用下での抗凝固薬である低分子量heparin(LMWH:enoxaparin)および未分画heparin(UFH)が,薬物動態(tirofibanの血漿クリアランス)および薬力学(tirofiban介在性の血小板凝集阻害,出血時間の延長)に与える影響を検討するとともに,その安全性および忍容性を比較検討。
デザイン ランダム化,二重盲検,ダブルダミー,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(5ヵ国,9施設)。
アメリカ(2施設),カナダ(4),フランス,イギリス,ニュージーランド(各1)。
期間 -
対象患者 55例。不安定狭心症または非Q波心筋梗塞(MI)患者。過去24時間以内の安静時または最小限の労作時における長時間または反復性の狭心症症状の発現,心電図所見における心筋虚血/心マーカー[クレアチンキナーゼ(CK)-MBまたはトロポニン]値異常/冠動脈疾患のいずれかが認められる症例。
【除外基準】抗凝固療法に禁忌,出血リスクの増大,血小板減少症の既往,aspirin・heparin・tirofibanにアレルギーまたは不耐症,緊急治療を要する重度の心血管疾患,臨床的に重要な検査値異常(血清クレアチニン値>177μmol/Lまたは血小板数<15万/mm3)。
治療法 tirofiban+enoxaparin併用投与群(26例)とtirofiban+UFH併用投与群(29例)に1:1の割合でランダム化。
tirofiban:負荷用量として0.4μg/kg/分を30分静注後,維持用量として0.1μg/kg/分で静注(PRISM-PLUS Trialと同様)。enoxaparin:1.0mg/kgを12時間ごとに皮下注(ESSENCE Trialと同様)。UFH:5,000Uボーラス静注後,初期維持用量として1,000U/時で静注(6,24,48時間後に活性化部分トロンボプラスチン時間がコントロールの1.5~2.5倍となるようノモグラムを用いて用量調整)。
投与は48~96時間後まで継続。84~96時間後にPTCAを施行した患者では,tirofiban静注を108時間後まで継続(tirofibanの平均投与時間:tirofiban+enoxaparin群71.7±22.4時間,tirofiban+UFH群64.5±22.3時間)。
全例にランダム化時にaspirin 160~325mg投与し,その後連日投与。狭心症治療薬の投与は担当医の判断に委ねた。難治性狭心症またはMI発症を除き,冠動脈造影および血管形成術は48時間以降に実施。冠動脈インターベンションを(48時間以内に)実施した場合,enoxaparin投与は10時間以降から開始。UFH投与はインターベンション施行直前に中止し,冠動脈造影および血管形成術施行中はtirofiban+enoxaparin群にはUFH,tirofiban+UFH群にはプラセボをボーラス投与,その後は通常のpracticeとして,あるいは活性化凝固時間を300秒に維持するようUFHを追加投与可能(オープン)。tirofiban投与は冠動脈造影および血管形成術施行中から施行後12~24時間まで継続。血管形成術で成功が得られた後のheparin投与は実施せず。
血漿tirofiban濃度を24,30,48時間後に測定し,血漿クリアランスを評価。リン酸アデノシン(5μM)誘発性の血小板凝集に対する阻害作用をベースライン時,24,30,48時間後に評価。出血時間をベースライン時,30分後に測定。
追跡完了率 脱落例は2例(3.6%)。
【脱落理由】試験薬の非投与(緊急インターベンション施行を要する臨床状態,胆石症の診断)。
結果

●評価項目
薬物動態の解析は51例(tirofiban+enoxaparin群26例,tirofiban+UFH群25例)で実施。血漿tirofiban濃度(中央値)は両群ともに42.5ng/mLと同等であり(p=NS),tirofibanの血漿クリアランスは,tirofiban+enoxaparin群176.7±59.8(84~356)mL/分,tirofiban+UFH群187.5±81.8(80~437)mL/分で両群間に有意差は認められず(p=NS),その差の平均値は十分に同等とみなせる範囲内であった。
リン酸アデノシン誘発性血小板凝集に対する阻害作用はtirofiban+enoxaparin群でより大きく(中央値:87.1% vs 85.8%,p=0.15),一定している傾向が認められた。70%を超える血小板凝集阻害作用が認められた症例は,tirofiban+enoxaparin群で多かった(84.0% vs 65.2%,p=0.19)。一方,出血時間の延長の程度はtirofiban+enoxaparin群で短縮傾向が認められ(中央値:20.7分 vs ≧30.0分,p=0.35),特に血小板凝集阻害作用の差を補正後は有意差がみられた(平均値:19.6分 vs 24.9分,p=0.02)。
試験薬を投与した53例(tirofiban+enoxaparin群26例,tirofiban+UFH群27例)の検討では,両群ともに入院中の臨床イベント発生率は低かった。tirofiban+UFH群でMIが2例,脳卒中または死亡は両群で認められなかった。インターベンション施行率は,tirofiban+enoxaparin群53.8%(14例,血管造影:14例,PTCA:7例,CABG:3例),tirofiban+UFH群55.6%(15例,各15例,8例,0例)。退院後の追跡においても,tirofiban+UFH群で死亡1例(致死性MI),tirofiban+enoxaparin群で非致死性MIが2例認められたが,統計学的有意性を示すのに十分なイベント数は得られなかった。

●有害事象
投与開始から投与終了後24時間において,両群において重度または軽度の出血は認められず,tirofiban+enoxaparin併用の忍容性は良好であった。

文献: Cohen M, et al. Combination therapy with tirofiban and enoxaparin in acute coronary syndromes. Int J Cardiol 1999; 71: 273-81. pubmed
関連トライアル ACS患者に対するenoxaparinとUFHの比較, ACUITY 1-year results, ACUITY bivalirudin, ACUITY switching to bivalirudin, ATACS, ATOLL, Canadian Lamifiban Study, ESSENCE 1997, ESSENCE 1998, ESSENCE 2000, ExTRACT-TIMI 25, ExTRACT-TIMI 25 1-year outcomes, ExTRACT-TIMI 25 clopidogrel, FRAX.I.S, FRIC, Kereiakes DJ et al 1996, MINT, OASIS-5, PARAGON-A, PRISM, PRISM-PLUS 1998, PRISM-PLUS 1999, Rabah MM et al, RESTORE, Schulman SP et al, SEPIA-ACS1 TIMI 42, STEEPLE, SYNERGY, TACTICS-TIMI 18 1998, TACTICS-TIMI 18 2001, TIMI 11A, TIMI 11B, TRIM
関連記事