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NASCET 1998 North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial
結論 中等度の症候性頸動脈病変(狭窄率50~69%)を有する脳卒中既往患者への頸動脈内膜切除術施行は,脳卒中リスクの抑制に有効であった。同切除術の選択には患者のリスク因子を考慮し,施行には習熟した技術を要する。狭窄率<50%の患者では本切除術の有用性は認められなかったものの,重度の狭窄(≧70%)患者では8年後のベネフィットが示された。

目的 症候性の中等度の頸動脈狭窄を有する脳卒中既往患者において,頸動脈内膜切除術と薬物治療の有効性を比較検討。さらに,重度の症例に対する頸動脈内膜切除術施行の長期にわたる効果を検討。
一次アウトカム:狭窄と同側における致死性または非致死性脳卒中。
デザイン ランダム化,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設。
期間 追跡期間は平均5年。
登録期間は1987年12月~1996年12月。1997年に最終評価を実施。
対象患者 2,226例。平均年齢66歳。血管造影所見で,過去180日以内に中等度の頸動脈狭窄(狭窄率<70%)と同側に一過性脳虚血発作(TIA),あるいは障害を伴わない,または症状の継続が24時間未満(Rankinスコア<3)の脳卒中既往患者。
【除外基準】以下の条件を1つ以上満たす症例:血管造影による病変血管の描出が不可能な患者,頭蓋内血管における狭窄,他疾患による余命5年未満,梗塞部位の機能を喪失した脳梗塞の既往,非アテローム性頸動脈疾患,脳塞栓症の要因となる心病変を有する患者,同側性の血管内膜切除術の施行歴。
治療法 薬物治療群(1,118例)と頸動脈内膜切除術施行群(1,108例)にランダム化(薬物治療群では,狭窄率50~69%:428例,<50%:690例,頸動脈内膜切除術では,狭窄率50~69%:430例,<50%:678例)。
全例に抗血小板療法(通常はaspirin腸溶錠,投与量は神経内科医師の裁量により決定)を実施,降圧薬および高脂血症治療薬は必要に応じて投与。頸動脈内膜切除術の術式は執刀医の裁量に任せ,他の処置を同時に実施することは避けた。
追跡完了率 アウトカムに関する完全なデータは対象症例の99.7%から入手可能。
【脱落理由】表記なし。
結果

●評価項目
狭窄率50~69%の患者における5年後の一次アウトカム発生率は,頸動脈内膜切除術群で15.7%,薬物治療群では22.2%と有意差がみられた(相対リスク減少率29%,p=0.045)。本結果は,5年間での脳卒中1例の予防に頸動脈内膜切除術を15例施行する必要があることを示している。狭窄率<50%の患者における5年後の一次アウトカムは,頸動脈内膜切除術群14.9%,薬物治療群18.7%であった(相対リスク減少率20%,p=0.16)。
全評価項目(全脳卒中および全死亡)において,狭窄率50~69%の患者では<50%の患者に比し,薬物治療群でイベント発生リスクが高く,頸動脈内膜切除術のベネフィットが大きかった。また,50~69%の患者では頸動脈内膜切除術群で有意なイベント抑制が認められたが,<50%の患者では有意ではなかった。
頸動脈内膜切除術を施行した重度狭窄患者(狭窄率≧70%)での30日後の死亡率または90日後の障害を伴う同側性脳卒中発症率は2.1%で,8年後でも6.7%に留まった。なかでも,男性,最近の脳卒中および半球性の症状を有する患者,およびaspirin服用(≧650mg/日)患者において最も切除術のベネフィットが高かった。

●有害事象
表記なし。

文献: [substudy] Barnett HJ, et al for the North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial Collaborators. Benefit of carotid endarterectomy in patients with symptomatic moderate or severe stenosis. N Engl J Med 1998; 339: 1415-25. pubmed
関連トライアル Mayo Asymptomatic Carotid Endarterectomy Study, TASS 1989
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