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TIMI II 1989 Thrombolysis in Myocardial Infarction Phase II
結論 血栓溶解療法rt-PA+heparin,aspirin投与を行った急性心筋梗塞(AMI)患者において,発症後18~48時間以内の侵襲的治療(冠動脈造影後,予防的PTCA施行)は,保存的治療に比較して死亡と再梗塞の抑制に優れていなかった。侵襲的治療は,再発性虚血の患者へ実施した場合のみ,臨床状態の悪化もなくコストも抑制された。さらに,rt-PAへの補助療法として,早期のβ遮断薬投与は再梗塞および虚血の抑制に有用であることが示された。

目的 急性心筋梗塞(AMI)に対するrt-PA(alteplase)による血栓溶解療法後の,侵襲的治療または保存的治療の早期の有効性を比較検討。
一次エンドポイント:42日以内の再梗塞または死亡。二次エンドポイント:退院時および6週間後の安静時および運動負荷時の駆出率(EF)。
さらに,サブグループ解析により,β遮断薬の早期および遅延投与の有効性を比較検討(一次エンドポイント:退院時の左室造影所見によるEF)。
デザイン ランダム化。
セッティング 多施設(50病院)。アメリカ。
期間 追跡期間は6ヵ月。1988年6月登録終了。1988年8月追跡終了。
対象患者 3,262例。年齢<76歳(平均57歳)。男性82%,白人88%。
サブ解析(β遮断薬投与):1,390例(侵襲的治療群709例,保存的治療群681例)。
急性心筋虚血と推測される胸部不快感が30分以上持続し,胸痛開始から4時間以内にrt-PAを静脈内投与した患者。心電図所見により隣接する2つ以上の誘導でのST上昇(≧1mV)が認められる症例。
【除外基準】脳血管疾患の既往,SBP>180mmHgまたはDBP>110mmHg,出血性合併症,過去2週間以内の手術施行歴,最近の時間を要した心肺蘇生術歴,過去6ヵ月以内のPTCA施行歴または重篤な外傷,CABGまたは人工心臓弁置換術施行歴,左脚ブロック,拡張型心筋症,その他重篤な疾患。
サブグループ解析:登録時のβ遮断薬,verapamil,diltiazem投与例,β遮断薬静注投与への禁忌など。
治療法 全例にrt-PA投与。最初の520例は150mgを6時間で静脈内投与したが [90mgを1時間(10%は初回ボーラス),20mgを1時間,40mgを4時間] ,頭蓋内出血の発生率が予想を上回ったため,残りの2,742例では100mgに減量(6mg初回ボーラス後, 54mgを1時間,20mgを1時間,20mgを4時間)。
侵襲的治療群(1,636例)と保存的治療群(1,626例)にランダム化。
侵襲的治療群:rt-PA静注開始から18~48時間以内に冠動脈造影と心室造影を実施し,評価によって予防的PTCAを施行。保存的治療群:入院中の薬物治療にかかわらず虚血を再発した症例,および退院時運動負荷試験で虚血を再発した症例に,心臓カテーテル法およびPTCAを施行。
以下の場合はPTCAを実施せず:梗塞関連動脈が閉塞し(TIMI grade 0または1),かつ虚血の再発が認められない症例,残存狭窄率<60%または病変が不安定な症例,血行動態に影響をおよぼす急速な閉塞。CABGは,胸痛の改善がみられない,PTCAに不適応であるが手術に適応する症例(左主冠動脈の狭窄率≧70%),PTCA後に冠動脈が再閉塞した症例に施行。
全例に,lidocaineを投与(1~1.5mg/kgボーラス投与後,2~4mg/分で24時間以上静注)。rt-PA静注開始と同時に,heparin 5,000Uをボーラス静注し,1,000U/時を継続静注(活性化部分トロンボプラスチン時間をコントロールの1.5~2倍に維持)。侵襲的治療群では,カテーテル法施行2~3時間前にheparin投与量を50%減量し,施行中は動脈シース挿入後5,000Uボーラス投与,その後1時間以内に所定の投与量に戻し5日間継続静注。最初の328例にaspirin 80mg を1日目から投与,残りは2日目より投与開始。heparin静注から皮下投与(12時間ごとに1万U)に切り替えた6日目から,aspirin 325mg/日を退院時まで継続投与。
退院時に血管造影(運動負荷時,安静時),および6週間後の運動負荷試験時における心電図,左室造影を実施しEFを評価。
サブグループ解析:β遮断薬早期投与群(696例)とβ遮断薬遅延投与群(694例)にランダム化。早期群:metoprolol 15mg(5mgを2分ごとに3回)静注後,100mg/日(分2)を入院初日,その後は倍量を可能な限り経口投与。遅延群:6日目にmetoprolol 100mg/日(分2)を経口投与し,その後は倍量を継続投与。
追跡完了率 表記なし。
結果

●評価項目
発症から血栓溶解療法開始までは平均2.6±0.02時間。心臓カテーテル法施行時(18~48時間後)の梗塞関連動脈の開存(TIM grade 2または3)は,rt-PA 150mg群で84.7%(194/229例),rt-PA 100mg群では84.6%(1,040/1,229例)とrt-PA投与量による開存性に有意差は認められなかった。
心臓カテーテル法の施行は侵襲的治療群で93%(1,527例:ランダム化後48時間以内),保存的治療群32.7%(532例:14日以内)。PTCA施行は,侵襲的治療群56.7%(928例),保存的治療群13.3%(216例)であり,うち改善が認められたのは各群93.3%(完全な改善85.1%,一部の改善8.2%),91.7%(各85.6%,6.0%)。
一次エンドポイント発生率は,侵襲的治療群10.9%(179例),保存的治療群9.7%(158例)と侵襲的治療群で高率な傾向にあったが有意ではなかった(絶対差1.2%,95%CI -0.9-3.3%,p=0.25)。死亡+非致死性再梗塞+頭蓋内出血+PTCA後のCABG施行の複合エンドポイント発生率は,侵襲的治療群13.0%(212例),保存的治療群10.6%(172例)と保存的治療群において減少傾向がみられた(p=0.04)。PTCA,CABGまたは両方を施行した症例は,侵襲的治療群1,028例,保存的治療群273例,うち42日後の生存率は各群97.9%,97.8%であった。一方,PTCA非施行例における42日後の生存率は,各群95.2%(493/518例),97.6%(1,253/1,284例)。
退院時または6週間後の安静時における平均左室EF(LVEF)に,両群間に差は認められなかった(退院時:侵襲的治療群50.0% vs 保存的治療群49.9%,p=0.30,6週間後:50.5% vs 50.4%,p=0.51)。一方,運動負荷時におけるEF(EFの絶対差:運動負荷試験時-安静時)は保存的治療群に比し侵襲的治療群で増加傾向にあった(退院時:3.7% vs 3.1%,p=0.06,6週間後:3.3% vs 2.3%,p=0.02)。退院時の運動負荷試験時に心筋虚血が認められたのは,侵襲的治療群161例(12.8%),保存的治療群230例(17.7%)と侵襲的治療群で有意に抑制されたが(p<0.001),6週間後では各群202例(16.8%),229例(19.4%)であった(p=0.09)。
サブグループ解析:
一次エンドポイント(退院時の平均EF)に群間差はみられず(早期群50.5% vs 遅延群50.0%),6週間後(49.9% vs 50.9%)および運動負荷時においても同等であった。また,早期のβ遮断薬投与による侵襲的および保存的治療への影響に差は認められなかった(p=0.70)。臨床イベントの比較では,6日後の再発性虚血の発生が早期群で有意に抑制され(15.4% vs 21.2%,p=0.005),非致死性再梗塞も抑制傾向にあった(2.3% vs 4.5%,p=0.02)。この差はPTCA治療群によるものではなかった。発症から2時間以内に治療開始した症例における死亡+MI再発は,早期群5.0%(9/181例),遅延群12.1%(23/190例)と早期群で抑制されたが(p=0.01),2~4時間以内の治療開始例では同等であった(p=0.83)。

●有害事象
PTCA後のCABG施行率は侵襲的治療群で有意に多く(3.1% vs 1.3%,p=0.001),rt-PA 150mg投与群において100mg投与群に比し輸血の必要性(>1U)が多くみられた。また,頭蓋内出血の発生率はrt-PA 150mg群1.9%(11/582例),rt-PA 100mg群0.5%(16/2,952例)と150mg群で有意に高かった(p<0.001)。

文献: [main] The TIMI Study Group. Comparison of invasive and conservative strategies after treatment with intravenous tissue plasminogen activator in acute myocardial infarction: Results of the thrombolysis in myocardial infarction (TIMI) phase II trial. N Engl J Med 1989; 320: 618-27. pubmed
関連トライアル ASSET, Barbash GI et al, COBALT, DANAMI, ECASS, ECSG-RTPA, García E et al, GUSTO IIb 1997, GUSTO-I 1993, GUSTO-I 1993, HART 1990, ICTUS, Mayo Coronary Care Unit and Catheterization Laboratory, NHFACT, NRMI-2, PACT, PAMI, SCATI, Schwartz L et al, TACTICS-TIMI 18 1998, TACTICS-TIMI 18 2001, TAMI 1 1987, TAMI 1 1988, TAMI 5 1991, TAMI 5 1991, TIMI 4, TIMI 5, TIMI II 1992, TIMI II 1993, TIMI II 1995, TIMI IIA 1988, TIMI IIA 1990, TIMI IIIB 1994, TIMI IIIB 1995, VANQWISH, WARIS 1990
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