抗血栓トライアルデータベース
home
テキストサイズ
TIMI IIA 1988 Thrombolysis in Myocardial Infarction Phase IIA
結論 血栓溶解療法後の早期の冠動脈造影およびPTCA施行は,18~48時間後の施行に比し有用ではなく,有害である可能性が示された。

目的 急性心筋梗塞(AMI)患者に対する血栓溶解療法(rt-PA)後の早期(2時間以内)PTCAと遅延(18~48時間)PTCAの有効性を比較検討。
一次エンドポイント:退院時の左室駆出率(EF)。
デザイン ランダム化。
セッティング 多施設(7病院:50 TIMI hospitals中)。アメリカ。
期間 追跡期間は21日。登録期間は1986年4月~1987年9月。
対象患者 389例。年齢≦75歳(平均57歳)。男性83%,白人98%。隣接した2つ以上の誘導でのST上昇(≧0.1mV)および急性心筋虚血と推測される胸痛が30分持続。胸痛発現後4時間以内に血栓溶解療法の施行可能な症例。
【除外基準】過去6ヵ月以内のPTCA施行歴,CABGまたは人工心臓弁置換術の施行歴,脳血管疾患既往,コントロール不能な高血圧症,出血性合併症(重篤な胃腸管出血を含む),過去6ヵ月以内の重篤な外傷,最近の時間を要した心肺蘇生術施行,その他の重篤な疾患。
治療法 早期PTCA施行群(195例)と遅延PTCA施行群(194例)にランダム化。
早期PTCA群:rt-PA静注後120分以内に冠動脈造影および心室造影を施行し,梗塞関連動脈の開存・閉塞にかかわらずPTCAを施行。遅延PTCA群:rt-PA静注後18~48時間以内に冠動脈造影および心室造影を施行し,責任血管がTIMI grade 2または3以上の場合にPTCAを施行。
全例にrt-PAを投与(発症後30分~4時間:平均2.9時間後)。当初は150mg/6時間で投与したが(早期PTCA群62例,遅延PTCA群66例),出血性合併症,特に頭蓋内出血の発生率が高かったため100mg/6時間に減量(各群133例,128例)した(6mgボーラス投与後,54mgを1時間,20mgを1時間,5mgを4時間ごとに静注)。
以下の場合にはPTCAを施行せず:関連動脈の残存狭窄率<60%または病変がPTCAに不適応な症例,血行動態に影響をおよぼす急速な閉塞。CABGは,胸痛の改善がみられない,PTCAに不適応であるが手術に適応する症例(左主冠動脈の狭窄率≧70%)に施行。
全例に,lidocaine投与(1~1.5mg/kgボーラス投与後,2~4mg/分で24時間以上静注)。rt-PA静注開始と同時に,heparin 5,000Uボーラス静注し,重篤な出血のない限り1,000U/時を5日間継続静注(活性化部分トロンボプラスチン時間を正常上限値の1.5~2倍に維持)。遅延PTCA群では,カテーテル法施行2~3時間前にheparin投与量を50%減量し,施行中は動脈シース挿入後5,000Uをボーラス投与,その後1時間以内に所定の投与量を48時間継続静注。aspirin 80mg/日を2日目から投与開始し,heparin投与中止の5日目から325mg/日に増量。
追跡完了率 表記なし。
結果

●評価項目
(早期PTCA施行,遅延PTCA施行,保存的治療の3群で検討したTIMI II A Trialのうち,PTCAを施行した2群における早期の結果を報告。)
早期PTCA群で遅延PTCA群に比し中等度~高リスク症例が多かった(72.8% vs 61.9%)。rt-PA静注開始からカテーテル法施行までの時間は,早期PTCA群で平均1.4時間(15分~3.3時間),遅延PTCA群で32.7時間(16~57時間)。PTCA施行前の血管造影による梗塞関連動脈の開存率は,早期PTCA群75%,遅延PTCA群83%と有意差はなく(p=0.07),狭窄率≧60%病変を有さない症例の割合は各群4.9%,14.6%であった(p=0.001)。
冠動脈造影の施行率は,早期PTCA群72%(141例),遅延PTCA群55%(107例)であり,各群84.4%(119例),93.5%(100例)で改善が認められた。
カテーテル法施行による合併症は,早期PTCA群5.2%(10/193例),遅延PTCA群1.1%(2/175例)と早期PTCA群で有意に高く(p=0.03),PTCA施行による合併症をあわせても早期PTCA群で有意に多かった(12.4% vs 4.0%,p=0.004)。PTCA施行による急性合併症の発症率は,早期PTCA群12.8%(18/141例),遅延PTCA群6.5%(7/107例)と早期PTCA群で高い傾向が認められ(p=0.11),梗塞関連動脈の閉塞は各群11.4%(16例),4.7%(5例)であった(p=0.06)。施行後24時間以内の死亡は早期PTCA群3例,遅延PTCA群1例。
退院時のEF(一次エンドポイント)は,早期PTCA群50.3%,遅延PTCA群49.0%と両群間に有意差は認められず(p=0.37),低リスク症例と中等度~高リスク症例での平均EFの比較も両群で同等であった。また,退院時の冠動脈造影(早期PTCA群152例,遅延PTCA群151例)所見による開存率は,早期PTCA群78%(119例),遅延PTCA群80%(121例),閉塞率は各群17%(26例),15%(22例)。
死亡率は早期PTCA群と遅延PTCA群で同等 [24時間後:3.6%(7例)vs 2.1%(4例),p=0.35,72時間後:4.6%(9例)vs 3.6%(7例),p=0.60,21日後:7.2%(14例)vs 5.7%(11例),p=0.54]。21日後の致死性および非致死性MI発症は,各群6.7%(13例),4.1%(8例)と有意差はなく(p=0.27),うち各群2例が48時間以内に死亡。死亡+非致死性MIの複合も,早期PTCA群12.8%(25例),遅延PTCA群8.8%(17例)と有意差なし(p=0.20)。21日後におけるPTCA後のCABG施行率は,各群6.7%(13例),1.5%(3例)と遅延PTCA群で抑制された(p=0.02)。rt-PA静注開始から72時間以内にイベント[死亡,MI再発,血液または赤血球の輸血(≧1U,CABGによる輸血は除く),PTCA後のCABGまたはPTCA再施行など]が1つ以上認められたのは,早期PTCA群21.5%(42例),遅延PTCA群13.9%(27例)と早期PTCA群で有意に多く(p=0.05),21日後においても同様であった(30.8% vs 14.9%,p<0.001)。

●有害事象
21日後では頭蓋内出血は各群1例(いずれもrt-PA 100mg投与)。輸血は早期PTCA群で有意に多かった[20.0%(39例)vs 7.2%(14例),p<0.001]。

文献: [main] The TIMI Research Group. Immediate vs delayed catheterization and angioplasty following thrombolytic therapy for acute myocardial infarction: TIMI II A results. JAMA 1988; 260: 2849-58. pubmed
関連トライアル ECSG-RTPA, García E et al, NRMI-2, PACT, PAMI, RESTORE, TAMI 1 1987, TAMI 1 1988, TIMI II 1989, TIMI II 1995, TIMI IIA 1990, TIMI IIIB 1994
関連記事