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MATE Medicine Versus Angiography in Thrombolytic Exclusion
結論 血栓溶解療法に禁忌である急性冠症候群(ACS)患者への早期の治療方針選別を目的とした血管造影施行は,虚血イベントの再発および死亡の抑制に有効であり,初回入院時における血行再建術施行までの時間を有意に短縮した。血管造影後の早期の血行再建術施行率は高率であったにもかかわらず,心血管イベント(虚血の再発による再血行再建術施行)に対する長期的ベネフィットは薬物療法と同等であることが示された。

目的 血栓溶解療法に禁忌である急性冠症候群(ACS)患者において,治療方針選別を目的とした血管造影と血行再建術による積極的治療の臨床転帰への影響を薬物治療と比較検討。
一次エンドポイント:再発性虚血+死亡の複合。二次エンドポイント:入院日数または入院費。
デザイン ランダム化,intention-to-treat解析。
セッティング 多施設(4病院:Southeast Michigan community hospitals)。アメリカ。
期間 追跡期間は退院後12~52ヵ月(中央値21ヵ月)。
対象患者 201例。年齢≧18歳。酵素値上昇の有無にかかわらず,急性心筋梗塞(AMI)と推測される急性の胸痛による搬入患者。血栓溶解療法に不適格な症例(心電図異常なし,6時間を超える症状の持続,出血または脳卒中リスクの増加)。
【除外基準】24時間を超える症状の持続,心カテーテル法への絶対適応あるいは禁忌。
治療法 積極的治療群(111例)と保存的治療群(90例)にランダム化。
保存的治療群:標準的な薬物治療(非侵襲的治療)を継続。クロスオーバー(心カテーテル法施行)は次の場合に実施。登録後24時間以内:4時間を超える薬物治療で消失しない胸痛の持続,または心電図異常を伴う胸痛の再発,あるいは不安定な血行動態。>24時間:虚血性イベントまたは担当医の選択。
積極的治療群:入院後24時間以内に心カテーテル法を施行。適合例にはPTCA,アテレクトミー,ステント,CABGを施行。
全例にaspirin 325mg(咀嚼錠)投与,heparin 5,000~1万Uボーラス静注後,10U/kg/時で静注,nitroglycerin 10~30μg/分を静注後滴定。metprolol 15mgまたはpropranolol 8mg(いずれも最大投与量)を心拍数<70を目標に忍容可能な用量を静注。鎮痛薬投与は許可。
追跡完了率 表記なし。
結果

●評価項目
ベースライン時の患者背景は,保存的治療群で非インスリン依存型糖尿病(9% vs 22%),喫煙歴(4% vs 19%)が有意に高かった(各p=0.009,p=0.0004)のを除き同等であり,発症から登録までの平均時間も差はなかった(9±7時間 vs 9±6時間,p=0.53)。
登録から血行再建術施行までの平均時間は,積極的治療群27±32時間,保存的治療群88±98時間と積極的治療群で有意に短縮され(p=0.0001),PTCAまたはCABG施行までの時間も同様であった。
治療方針選別を目的とした血管造影施行は,積極的治療群109例,保存的治療群54例。血行再建術施行率は,積極的治療群64例(58%),保存的治療群33例(37%)と積極的治療群で有意に高かったが(p=0.004),血管造影施行例における施行率は両群間で同等であった(59% vs 61%,p=0.77)。保存的治療群で血管造影を施行した54例のうち,27例(50%)は虚血イベントによる血行再建術施行であった。
血管造影施行の163例において,左回旋枝(LCX)または鈍角枝病変は積極的治療群で少なかったものの(9% vs 20%,p=0.05),病変の平均狭窄率[積極的治療群94%(n=54)vs 保存的治療群91%(n=36),p=0.22],および閉塞例(両群ともに20%,p=0.98)は同等であった。
AMI発症は,積極的治療群57例(51%),保存的治療群49例(54%)であり(p=0.81),同症例の最大クレアチンキナーゼ(CK)値は各群16±22μkat/L vs 14±16μkat/L,962±1,339U/L vs 835±963U/Lと同等であった(p=0.47)。再梗塞+院内死亡は各群ともに3%と有意差は認められなかったが(p=0.5),心電図異常,血行動態異常を伴う虚血イベント再発+再梗塞+死亡の複合は積極的治療群5例(5%),保存的治療群12例(13%)と積極的治療群におけるリスク減少率は40%(95%CI 15-58%,p=0.03)であった。一次エンドポイント発生率は,積極的治療群13%(14例),保存的治療群34%(31例)と積極的治療群でリスク減少率45%(95%CI 27-59%,p=0.0002)であり,NNTは5人であった。
遠隔期の心血管イベント(再入院,冠動脈造影,PTCA,CABG施行)発生率に群間差はなく,PTCAまたはCABG累積施行率,AMI再発または全死亡の累積発生率も同等であった。MI再発+再梗塞+死亡の複合エンドポイント発生率は,積極的治療群14%(15例),保存的治療群12%(11例)と有意差は認められなかった(p=0.6)。CABG施行後の死亡率は,積極的治療群5%(1/20例),保存的治療群22%(2/9例)と同等であり(p=0.22),全死亡率に占める割合は14%(3/21例)であった。
入院期間は両群で同等であったが(5±5日 vs 5±4日,p=0.60),2日以内の退院は積極的治療群39例(35%),保存的治療群15例(17%)と積極的治療群で有意に多かった(p=0.003)。また,PTCA施行例での5日以内の退院は75%(36/48例)vs 48%(13/27例),CABG施行例での10日以内の退院は67%(12/18例)vs 14%(1/7例)といずれも積極的治療群で高率であった(各p=0.02,p=0.03)。
平均コスト(1995年時点でのドル計算)は両群間に有意差はなく($11,239±8,911 vs $9,251±8,010,p=0.10),血管造影,PTCA,CABG施行別のコストも同等であった。

●有害事象
脳卒中は,積極的治療群と保存的治療群ともに2例(2%)であり(p=0.77),一過性高窒素血症は各群2例(2%),3例(3%)であった(p=0.81)。また,手術を要する血管合併症は各群1例(1%),0例(p=0.55)。積極的治療群で輸血が多く認められたが[11例(10%)vs 4例(5%),p=0.17],うち12例はCABG施行後の実施であった。

文献: [main] McCullough PA, et al. A prospective randomized trial of triage angiography in acute coronary syndromes ineligible for thrombolytic therapy: Results of the medicine versus angiography in thrombolytic exclusion (MATE) trial. J Am Coll Cardiol 1998; 32: 596-605. pubmed
関連トライアル APRICOT, Barbash GI et al, Cragg DR et al, LATE 1995, MITI II, PCI-CURE, RAPT, SWIFT, SYNERGY angiography, TACTICS-TIMI 18 1998, TIMI IIIB 1994, TRIC, VANQWISH
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